1958年に公開されたフランス映画、『Mon Oncle』(邦題:ぼくの伯父さん)。
フランスのチャールズ・チャップリン(Charlie Chaplin)というべき、ジャック・タチ(Jacques Tati)が監督、脚本を務めた『伯父さんシリーズ』の2作目。
今でも根強いファンの多いこの名作の魅力を深掘りしてみましょう!
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/jacquestati.officiel/)
あらすじ:ユーモアでいっぱい!伯父さんの一日
気立てが良いけどなにかと不器用な伯父さん、ムッシュ・ユロ(ジャック・タチ)。
彼は下町にあるアパートの最上階に住みながら、ゆっくりとした生活を送っていた。
しかし、姉夫妻が超モダンな家とともに郊外に引っ越してきてしまう。
悪夢的なモダニズムに嫌悪感を抱いたムッシュ・ユロは、なんとか甥っ子(アラン・ベクール)を外の世界に連れ出そうとするが、姉夫妻はユロを新しい生活に引き込もうとしてくるのだった・・・
●ジャック・タチ(Jacques Tati)
誕生日:1907年10月9日生まれ 没:1982年11月4日(75歳)
出身:フランス
▶ジャック・タチの主な作品
深掘りポイント1:なぜこの作品はこれほどまでに愛されるのか
なぜこの作品はこれほどまでに愛されているのでしょうか。
いろいろ考えてみると、二つの要素が浮かび上がってきます。
まずは、この映画の「音」について。
この映画のジャック・タチは、サイレント映画ばりに喋りません。
しかし、映画の中に溢れる、いかにもフランスっぽいコロコロとしたテーマ音楽、そして街の人々の歩く音や、噴水の音。
これらの「音」に僕たち観客は引き込まれてしまうのでしょう。
そしてもう一つは、「世界観」だと思います。
この映画には、いろんな形をした建物、家具、オブジェが出てきます。
どれもモダニズム的なものばかり。
モダニズムといえば、20世紀前半に流行った芸術運動ですが、これの取り入れ方がとてもお洒落なんです。
いい意味でのフランスっぽさと言いますか、アメリカ映画では観ることのない解釈で表現しているのです。
深掘りポイント2:ジャック・タチは何を伝えたかったのか
ジャック・タチはこの映画で何を伝えたかったのでしょうか。
この映画の物語の主軸は、ジャック・タチ演じる伯父さんが、迫ってくる近代化の波にどうにか打ち勝とうと奮闘するというもの。
そして、それと同時にジャック・タチの近代化に対する明らかな皮肉的要素もこの映画には含まれていると思います。
この映画が公開されたのは1958年、第二次世界大戦も終わり、人々の生活も少しずつ安定した頃。
アメリカをはじめとする欧米の街が少しずつ都市に変わっていく時代でした。
そんな時代の変化をしっかりと感じ取っていたジャック・タチは、はたして、便利になることだけが本当に幸せなことなのか。
と観客に問いているのではないでしょうか。
まとめ:伯父さんという生き方
まわりのドタバタに巻き込まれながらもしなやかに生きている、ムッシュ・ユロ。
彼は間違いなく”お爺さん”でも”おっさん”でもなく、かけがえのない自由とともに生きている”伯父さん”なのです。
いろいろ書きましたが、この映画の本当の素晴らしさは”伯父さんとしての生き方”にあるのかもしれないですね。
《ライター:yuho》 クリックで担当記事一覧へ→
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