プリンスが亡くなったというニュースは、当時10代だった私の記憶にも残っています。
プリンスに限らず、著名人が亡くなるというニュースには、毎回世界中の人々が心を痛めてきたことでしょう。
亡くなった本人を知っているか否かにかかわらず、誰かが亡くなったこと、その人のコンサートを二度と観ることができないことなど、様々な理由において、私たちは著名人の訃報に心を痛めます。
しかしそれは同時に、若い世代にとって、彼らを知らない世代にとって、彼らの生涯に触れるチャンスにもなります。
映画『プリンス』は、私たちに何を魅せてくれる?
今回紹介するのは、ドキュメンタリー映画『プリンス ビューティフル・ストレンジ』です。
2016年4月21日、57歳の若さで急死した天才ミュージシャン、プリンス(本名:プリンス・ロジャーズ・ネルソン)。
彼がどのようにその生涯を過ごしたかについて、当時、彼の周りにいた人々のインタビューを中心に明らかにされています。
なかでも、当時、住民の99%が白人であった北ミネアポリスという場所は、プリンスの人格形成からスタジオ兼自宅の「ペイズリー・パーク」まで、彼に深い影響をもたらした地として、本作で大きく取り上げられています。
他にも、プリンスを敬愛するチャカ・カーン、チャックⅮ、ビリー・ギボンズなどのミュージシャンたちのインタビュー映像を含め、プリンスという人物が再び映像となって息を吹き返します。
2021年にカナダで製作された本作、日本では、2024年6月7日に公開されました。
そんな映画『プリンス ビューティフルストレンジ』は、私たちに何を魅せてくれるのでしょう、深く残った印象を3つの視点から紹介してみたいと思います。
❶プリンスの想いが詰まった、北ミネアポリスという土地
映画では、プリンスのアーティストとしてのバックグラウンドや人格形成の過程が、当時、彼の周りにいた人々のインタビューによって語られていました。
その中でも印象に残ったのは、当時の北ミネアポリスという場所、プリンスの音楽に対するストイックさ、自分を好きでいてくれるファンとの距離です。
まず、当時の北ミネアポリスという場所。
北ミネアポリスというアメリカの北部の地は、「黒人大移動」と呼ばれる、当時、労働の場を求めた黒人がアメリカ南部からたくさん移住した場所でした。
当時の黒人差別は現代よりも酷く、選挙権、レストランへの入店など、あらゆる面で差別をされていた黒人コミュニティ。
そんな中、当時、住民の99%が白人であった北ミネアポリスの黒人コミュニティでは、「we」(私たち)という考えが広まり、「we」(私たち)が一致団結して何かを変えようという動きや思想があったようでした。
それは、プリンスのここ(北ミネアポリス)から何かを変えたい、「音楽で自分は変えてやる!」という思いに繋がっています。
❷ストイックなプリンス、バック・パフォーマーたちの声
次に、プリンスの音楽に対するストイックさ。
プリンスは、幼少期から楽器を習い始めましたが、1番最初に教室に来て、1番最後に帰るような生徒だったそうです。
それはプロになってからも同じで、12時間リハーサルを行った後、家に帰ってからも練習。
まさに、練習の虫ですよね。
そんな彼のバックに付くパフォーマーたちは、彼に付いて行くことの大変さをインタビューでも語っています。
❸ファンを心から愛したプリンス、「ペイズリー・パーク」のルール
最後に、自分を好きでいてくれるファンとの距離。
プリンスは、北ミネアポリスという場所にスタジオ兼自宅の「ペイズリー・パーク」を建設します。
今では観光地となっている「ペイズリー・パーク」。
プリンスの生前は、不定期でイベントが行われていたそうです。
その中での厳格なルールの1つに、あらゆる電子機器の使用禁止がありました。
これは、「今」を楽しんでほしいからだそう。
今の時代、何でも写真や動画で残せてしまいますが、それってその場を楽しめているのでしょうか?
今にも通ずる問いだと感じました。
本作では、当時のイベントに参加したファンのインタビューなんかも聞けちゃいます。
伝説は未来永劫、劇中曲も楽しみのポイント!
プリンスを知っている世代はもちろん、知らない世代であってもその人物像を知ることができる本作。
本作の上映時間は、1時間強!映画の尺としては短めです。
伝記映画・ドキュメンタリー映画が大好きなむげこ(筆者)、本作を観る前の意気込みは、生きた時代を知らない著名人の「伝記」を読む感覚で本作を味わいたい!でした。
劇中に流れるプリンスの音楽も楽しみなポイントの1つですよね。
もしかしたら、むげこ(筆者)のプレイリストに入ることになるかも…?
近年の伝記映画、ドキュメンタリー映画の流れ
近年、世界では多くの伝記映画やドキュメンタリー映画が公開されています。
伝記映画の流れを作った作品と言えば?
「伝記映画」という言葉をご存知ですか?
「伝記映画」とは、「伝記:個人一生の事績を中心とした記録」(広辞苑より引用)をフィクションである映画に取りこんだものです。
ドキュメンタリーとは異なり、完全な事実や史実に基づいた脚本によるものではなく、あくまでフィクションとして楽しむことができる、映画のジャンルの1つです。
まず、近年の伝記映画の流れを作ったと言っても過言ではない作品は、2018年の『ボヘミアン・ラプソディ』(18)(原題:Bohemian Rhapsody)ではないしょうか。
同作では、イギリスのロックバンド「QUEEN」のボーカル、フレディー・マーキュリーの生涯が描かれ、第76回ゴールデングローブ賞(ドラマ部門作品賞受賞)、第91回アカデミー賞(主演男優賞、編集賞、録音賞、音響編集賞受賞)などの有名な賞レースでも評価されました。
この作品から、主に洋楽を題材とする伝記映画が日本でも多く公開されるようになっていきます。
2022年の『エルヴィス』(原題:Elvis)をご覧になった方も多いのではないでしょうか。
関連記事:映画『エルヴィス』の真実、伝説のロックン・ローラーがラーマン監督で煌びやかに蘇る!
ドキュメンタリー映画、感動の『QUEEN ROCK MONTREAL』!
ドキュメンタリー映画に関して言えば、同じくQUEENの『フレディーマーキュリー THE SHOW MUST GO ON』(24)もありますね。
同作は、当時の生の映像が編集され、その当時、彼らが何を考え何を伝えたかったのかを観て、感じることのできる作品もありました。
これもQUEENですが、こちらは2024年の『QUEEN ROCK MONTREAL』です。
1981年11月24〜25日に、カナダのモントリオールで行ったQUEENコンサートの模様を収めたコンサートムービーも公開されました。
余談ですが…
筆者は、上記『QUEEN ROCK MONTREAL』を1人で観に行き、somebody to loveで号泣しました。(笑)
関連記事:映画『ボヘミアン・ラプソディ』、クイーンを知らない世代を夢中に!於・立川シネマシティ
まとめ
一般人であれば決して映像化や映画化されることのない生涯の記録・記憶が、今回紹介した『プリンス ビューティフルストレンジ』のようにドキュメンタリー映画としてこの世に残ることって本当に凄くありませんか?
これには、毎回思うところがあります。
人間いつかは死んでしまいます。
でも、死後も「誰かの中で生き続けていたい」と思うのは、私だけではないのではないでしょうか。
★むげこの鑑賞記録★
ついに!!!『プリンス ビューティフル・ストレンジ』を映画館に観に行ってきました。
公開初日に行く予定が……、ついに先日、観に行くことができました!
今後の映画情報を仕入れつつ、80席あまりの地元の映画館シネマ2で観てきました。
他にも気になる作品がたくさん…。
ライター:むげこ
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