エリザベス2世、現英国王室の女王の直系にあたるウィリアム王子と、ヘンリー王子の兄弟の確執が取り沙汰されています。
原因は、ヘンリー王子がメーガン妃と結婚して以降、夫婦の王室離脱が決定し兄弟の不仲も決定的になったとのこと。
メーガン妃の行状も含め、これをもって「英国王室騒動」とし、話題に事欠かないイギリスですね。
ネットスラング(ネット上での俗語)では、ブレグジット(英国のEU離脱)の次はメグジット( Megxit)と揶揄されました。
血なまぐさい中世・近世なら、ウィリアム王子の側近貴族は、ヘンリー王子が二度とブリテン島に戻れないよう先手を打ち、アメリカ?あるいはカナダへ出兵することを勧めたかも。
ちょっと考えすぎ?
でも、歴史あるイギリスは、王室の歴史がヨーロッパの抗争の歴史でもありました。
《目次:「王室騒動」3つの映画》
1.Mary Queen of Scots
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』:中世の王室騒動
2017年公開の、『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』から紹介しましょう。
英国王室の本当の歴史的騒動は、平和な現代のそれとはまったく比べ物になりません。
王位をめぐる確執や葛藤は、ヨーロッパ中を巻き込んだ国家間の戦争と直結していました。
(平和な現代で良かったですネ!)
その意味では、ドラマチックな歴史映画として取り上げられる理由があるわけです。
一番目の派手な騒動のひとつは、やはりエリザベス1世の時代。
正統を主張した、メアリー女王の末路
16世紀半ばのこと、二人はどちらも前イングランド国王ヘンリー8世の血筋を引く、非常に近い間柄でした。
イングランド(エリザベス女王)とスコットランド(メアリー女王)に別れていたのですが、後々「正統の女王の座」を争うことになります。
というのも、現在のイギリスはブリテン島と北アイルランドを含めひとつの国。
しかし、当時はブリテン島をほぼ二分し北がスコットランド、南がイングランドに分かれていました。
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一旦、フランス王室に嫁いでいたメアリー(シアーシャ・ローナン)ですが、君主の死亡とともにスコットランド女王として戻ってきたのです。
そして、時のイングランド女王エリザベス(マーゴット・ロビー)に対し、メアリーは自分の方こそイングランド直系女王だと異論を唱えます。
仲の良かった二人ですが、それぞれを取り巻く狡猾な貴族の思惑も絡んで、「歴史に残るお家騒動」への発展。
ここは、映画ならではの見どころです。
後を絶たなかった、エリザベス暗殺計画
即位した直後は不安定だったエリザベス女王の治世ですが、彼女は次第に力をつけイングランドを支配していきます。
しかし、北からの脅威(スコットランド)を取り除くためには、同じ血筋を引くメアリーの存在はどうしても邪魔でした。
メアリーは、子供のなかったエリザベスより優位に立つために、自らの子供(ジェームズ1世)を一旦エリザベスに差し出してまで融和を画策するほど激しい女性でした。
最終的には、エリザベスに終始付きまっていた暗殺計画に、メアリーが加担しているとする側近の声を聞き入れ、ついにメアリーの処刑を決断するのでした。
『エリザベス:ゴールデンエイジ』と表裏
ところで、『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』は、原題『Mary Queen of Scots』通りメアリー女王を中心とし描かれています。
一方で、この騒動(どちらかといえば一大事件!)の一端をエリザベス側から見ることができる映画がケイト・ブランシェット主演の、『エリザベス:ゴールデンエイジ』です。
描かれているのは、「黄金時代」を築いた強いエリザベス。
一方、メアリーは王位継承の正統性を主張しながら、最終的に処刑された「悲劇の女王」と同情的に言われています。
ぜひ、2つの映画から両者を見比べて、「王室騒動の真実」に迫ってみてはいかがでしょうか。
2.The Favourite
『女王陛下のお気に入り』は、スキャンダラスな王室!
次に紹介するのは、『女王陛下のお気に入り』です。
この時代は、前章のエリザベスやメアリーの時代から約100年以上経った、18世紀初頭の話です。
主人公は、1707年に即位したアン女王(オリヴィア・コールマン)。
【冒頭の画像。オリヴィア・コールマンはこの作品でアカデミー賞主演女優賞に輝きました。】
エリザベスの時代は、王室が権力を持つ「絶対王政」でしたが、ちょうどアン女王の時代から現在の王室同様、「君臨すれど統治せず」に変わっていきます。
領土も、この時に現在「イギリス」と呼ばれる、グレートブリテン島とアイルランドで一国になっています。
さて、映画自体がコミカルに制作されているせいもありますが、失礼ながらなんとも頼りないアン女王が登場します。
側近にあやつられた、アン女王の時代
同じ「王室騒動」でも、この映画は王位継承といった政治的なものではなく、女王が側近女官に操られるというどちらかといえば、スキャンダルを描いています。
今の王室から見て、はるか昔とはいえ先祖がこれだけ愚弄されると腹が立つのではと心配になるほどの内容。
史実から多少誇張されているとはいえ、登場する主要人物はすべて実在した人間で、大きな歴史の流れに沿っています。
当時のマスコミだったら、きっと面白おかしく「退廃する王室」として連日報道したかも?
内容を一言でいえば、「ただ君臨するだけの女王」が権威だけを振りかざし周囲を翻弄していく姿です。
女王の「お気に入り」に、しのぎを削る二人
原題は「The Favourite」で、文字通りアン女王の「お気に入り」になるべく仕えた二人の女官が登場します。
ひとりは、サラ・ジェニングス(レイチェル・ワイズ)。
もうひとりは、アビゲイル・メイシャム(エマ・ストーン)です。
サラは、かつてはアン王女と幼馴染であったこともあり彼女の女官となり、当初は女王の身の回りの世話をする存在でした。
しかし、当時フランスと交戦中で、サラが評判の軍人マールバラ公爵の夫人になったことで、夫に有利なように政策面でも口を出すようになります。
担がれるだけの女王に、忖度する高官たち
そこに登場するのが、サラの従妹になるアビゲイルです。
サラは身内に仕事を斡旋する程度の、軽い気持ちでアビゲイルを下級の女官として宮廷に入れることに。
しかし、これが後々、アン女王に気に入られるための2人の確執の始まりとなるのでした。
わがままで移り気で、時にヒステリックにわめき散らす女王に手を焼く二人。
面白いのは、国の高官が自分たちに有利な政策決断をアン女王にさせるために、女官二人を利用するところです。
最後は、片方の暗殺を企てるところまで発展する有様。
「忖度合戦」を高みの見物をしていると、どこかの国、どこかの会社にもありそうな、実に古くて新鮮なスキャンダルです。
3.Diana
『ダイアナ』、今も世界から愛される
さて、時代は一気に現代へ。
3つ目の映画『ダイアナ』は、ウィリアム王子とヘンリー王子の母親ダイアナが、事故死するまでの2年間を追った映画です。
原作ケイト・スネルの『Diana: Her Last Love』を基にして脚本が作られています。
ダイアナは、1981年に現エリザベス女王の第一子チャールズ皇太子と結婚。
イギリス中が大祝賀ムードに覆われたのは言うまでもありません。
しかし、祝福ムードが大きかっただけに、後に起こる数々の「歴史的醜聞」はイギリスだけでなく、世界中の注目を浴びることに。
「お祝い」ムードは、ウィリアム王子(1982年)とヘンリ王子(1984年)の誕生までの約3年間のみで、その後は眉をひそめる騒動ばかりでした。
別居、ダイアナの告発、不倫、離婚、そしてパパラッチに追われた上での事故死(1997年)…。
悲しい宿命を背負い続けた、ダイアナの最期
主演のダイアナは、ナオミ・ワッツが演じています。
(名優の彼女でさえ、ダイアナを演じるとなった時のプレッシャーは相当だったようですね。)
ダイアナ自身のスキャンダルも山ほどあったのですが、原因は現皇太子のチャールズとその不倫相手にあるとした風潮がほとんどでした。
そこへの彼女の突然死は、多くのダイアナファンを悲しませ、次第にアイドル化していくことになります。
さて、映画の方は離婚後に交際をしていた外科医ハスナット・カーンとの愛情物語や、事故死の時一緒だったドディ・アルファイド氏との関係などが描かれています。
すでに王室を離れていたとはいえ、「英国王室」に一旦かかわりを持つと最後まで逃げられない悲しい宿命を感じさせる映画です。
(ダイアナ自体が偶像化された中での映画だったせいか、評価が低いのは非常に残念ですが筆者は主演者同様おススメしたい好きな映画です。)
ダイアナの訃報を知った、エリザベスその時
ところで気になるのは、ダイアナの突然死を聞いた時の、現エリザベス女王や元夫のチャールズ皇太子の反応です。
ヘレン・ミレン主演の『クイーン』からその一端(全貌?)をうかがい知ることができます。
なにせこの映画のキャッチフレーズが、「全世界が涙したその日、ただ一人、涙を見せなかった人がいた」と宣伝されたのです。
こちらも一見の価値ありです。あわせて是非、ご覧ください。
ちなみにこの映画で、主演のヘレン・ミレンはアカデミー賞主演女優賞に輝いています。
まとめ~願わくば愛される王室に~
千年の時を越えて、なお語り継がれる「英国王室騒動」の歴史。
いかがでしたでしょうか?
まさに、それはイギリスという国の歴史の一端でもあります。
一方、平和な時代の、ウィリアム王子とヘンリー王子、キーマンとなったメーガン妃と話題に事欠かない王室騒動が続きます。
茶の間の目が離せない雑談レベルならいいとしても、願わくば、誰も傷つかない愛される王室であってほしいと願いましょう!
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