今回、ご紹介するのはインド映画『RRR(アールアールアール)』です。
本作は『バーフバリ』シリーズのS.S.ラージャマウリ監督の最新作ということもあり、公開前から話題でした。
そして、今ではその口コミが拡がり、週末には劇場がほぼ満席になっている日がほとんどです。
今回は『RRR』を紹介しながら、ボリウッド映画事情に迫っていきたいと思います。
(冒頭画像:引用https://rrr-movie.jp/)
『RRR』公開記念/S.S.ラージャマウリ監督映画『バーフバリ 伝説誕生〈完全版〉
運命的出会いの2人、選ぶのは使命?それとも…
舞台は1920年、イギリス植民地下のインド。
イギリス軍に妹をさらわれたビームと、イギリス政府の警察であるラーマは、運命に導かれるようにして出逢う。
親友となった2人だったが、ある事件をきっかけに“敵”となってしまう…果たして2人が選ぶのは、使命か?それとも友情か?
イギリス植民地時代のインド、独立運動の激化
そもそも、イギリスとインドの関係は大昔からはじまります。
1600年、イギリスは東インド会社を設立し、現在のインドや東南アジア方面の開拓をはじめました。
彼らが求めたのが香辛料(スパイス)です。
料理に使うのはもちろん、当時は消化不良や腹痛などに効くとされ薬としても使用されており、ヨーロッパの上流階級の間でブームになっていたようです。
そこに目をつけ、東インド会社は本国に貿易品として持ち帰っていたそうです。
■ちょっと深堀の参考本【管理人・選】
参考:興亡の世界史 東インド会社とアジアの海 (講談社学術文庫)
※17世紀のイギリス、オランダ、フランスに相次いで誕生した東インド会社。(中略)喜望峰からインド、中国、長崎にいたる海域は、この時代に「商品」で結ばれ、世界の中心となり、人々の交流の舞台となっていた。そして、綿織物や茶、胡椒などがヨーロッパの市場を刺激して近代の扉を開き、現代に続くグローバル社会の先駆けとなったのだった。【引用:Amazon】
※2027年には人口で世界一に、28年には日本を抜いてGDPが世界3位になれることが予想されているインド。この新しい大国の実情や日本との知られざるつながりについて、池上彰が徹底解説!
貿易に関して言えば、イギリス文化には欠かせない紅茶も扱われていました。
有名な銘柄であるダージリンやアッサムがインドの地名だということは、言うまでもないでしょう。
本作『RRR』の舞台である1920年代のインドといえば、イギリスからの独立するための独立運動が激化していた頃です。
かの有名なガンディーが活躍していた時代だと言えば、その激しさが伝わることかと思います。
そうした時代の中で、実際に存在した独立運動の英雄がビームとラーマなのです。
私たちには馴染のない名前ではありますが、本国インドでは有名な英雄だといいます。
本作では、実際には出逢うことがなかった英雄2人が「もし出逢っていたら」というストーリーで構成されており、ドラマチックかつダイナミックな作品へと昇華されています。
史実とフィクションを掛け合わせた超大作なのです。
製作本数世界一の、「ボリウッド映画」事情
インド映画と言えば、ハリウッドならぬ「ボリウッド」と呼ばれていることは皆さんも知っていると思います。
実際、毎年インドは世界最大の映画製作本数を記録しており、ある年のデータによれば、アメリカで年間791本の映画を製作されたのに対し、インドでは年間1907本の映画が製作されていました。
この理由として「言語」が関係しています。
インドには200を超える言語が存在しており、方言をいれると900にもなると言われています。
その証拠にインドの紙幣であるルピーには、約20の言語が文字として記されています。
公用語ですら22個存在するインドでは、公用語に認定されている「ヒンディー語」ですら国民の約41%しか話すことが出来ません。
なので、準公用語として「英語」が存在しています。
つまり、言語数が多いので、言語ごとに数多くの映画が製作されている…なので、製作本数が世界最大なのです。
■インド映画ファンにおすすめの一冊!【管理人・選】
※日本でも一大ブームとなった『バーフバリ』をはじめ、『バジュランギおじさんと、小さな迷子』や『パッドマン 5億人の女性を救った男』など多数の情報をまとめた最新インド映画ガイド。
フェミニズムや宇宙開発、宗教の融和や身分制度の瓦解など、新たなるフェーズへ突入したインド映画を通じて、もっと”深く”、もっと”濃く”、今のインドを知ることのできる1冊。【引用:Amazon】
話題の「ナートゥ・ダンス」!なぜ、唄って踊るのか?多言語国インドとの関係
ボリウッド映画に特徴的なのが、歌とダンスです。
なぜ彼らは、唄って踊るのでしょう?
諸説あるため断定することは出来ませんが、誰が見ても分かる表現として歌やダンスを多用しているものだと考えられます。
映画『RRR』でも、言語が通じないイギリス人たちに対し、主人公たちが“ナートゥ”(naatu naatu from “rrr)というダンスを披露し、心通わせるシーンがあります。
(すっかり話題となった「ナートゥ・ダンス」のフルバージョンです。)
言葉はなくてもダンスを通して心を通わせることができる、という点で数多くの言語が存在するインドでは映画の中に組み込まれているのでしょう。
何より、お祝い事などのイベントがある時には、感情表現の一つとして国民たちは踊る習慣があるようです。
様々な言語が存在するインドならではの事情なのかもしれません。
ですが、そのダンスシーンを観て私たちもその熱量に心踊らされるのです。
ダンスたちの起源、想いが詰まった歴史とは
本作では、ナートゥを主人公たちが披露するシーンの直前、イギリス人の男性が自慢気にダンスのステップを披露します。
その一つに「フラメンコ」がありますが、実はフラメンコは、ロマ族と呼ばれる元々インドに住んでいた民族がスペインへと移住していった中で生まれたダンスです。
遠い過去にはなりますが、彼が自慢気に披露したものはインドが起源なのです。
少し皮肉ですね。
今日、様々なダンスのジャンルがありますが、その半分ほどは抑圧された人たちが生み出したものです。
例えば、タップダンスは黒人奴隷たちが考え出したもの…。
もしかすると、本作のナートゥを披露するシーンには、歴史上で抑圧されてきた人たちの想いがすべてつまったシーンだったのかもしれません。
だからこそ、私たちの印象に強く残るのだと思います。
まとめ~”血沸き肉躍る”最高の映画体験を!~
『RRR』が口コミで拡がっている理由は、その熱量のすごさでしょう。
宣伝でも、“すべてがクライマックス”と謳われています。
アクションはもちろん、ヒューマンドラマ、ラブストーリーなど様々なジャンルの要素が、3時間の中に凝縮されているのでものすごい充実感です。
何より、画面上がとにかく華やかかつド派手なので、観ていて飽きません。
表現が適切かどうかわかりませんが、幼い時に漫画などを読んでワクワクしていたあの頃の感情に似ています。
「早く次が知りたい!」と思うように、「早く、次の展開が観たい!」とここまで純粋に思えた作品は本当に久しぶりです。
とてつもなくド派手なアクションに、インド特有の音楽や歌、ダンスが加わったことで、字のごとく「血沸き肉躍る」映画体験となっています。
《ライター:ファルコン》 クリックで担当記事一覧へ→
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映画と音楽が人生の主成分のライターのファルコンです。
学生時代に映画アプリFilmarksの“FILMAGA”でライターをしていました。
大人になって、また映画の世界の魅力を皆さんにお伝えできれば、と思いライター復帰しました。
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