今回ご紹介する映画は、『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』。
1980年代に活躍したイギリスのバンド、“ザ・スミス”が重要なカギを握る映画です。
“ザ・スミス”は、皮肉や攻撃的な歌詞と、それとは裏腹な繊細なメロディーで当時の若者を魅了してきました。
バンドとしての活動期間は5年と短いながらも、今でも色あせない素晴らしい曲がたくさんあります。
あらすじ:“ザ・スミス”が解散!若者たちの一晩…
“ザ・スミス”が解散するというニュースが流れ、大きな衝撃を受けるクレオ。
レコード店で働くディーンに「この一大事を町中に知らせたい」とぼやくも、友人たちとパーティーに出かけていきます。
一方のディーンは、クレオの言葉を受け止め、行動を起こします。
それはラジオ局を乗っ取り、“ザ・スミス”の曲を一晩流し続けるというもの。
クレオは参加するパーティーでつけたラジオから“ザ・スミス”ばかり流れてくることに気づき、それがディーンであることに気づきます。
若者のモヤモヤ感、ザ・スミスの楽曲とマッチ!
将来の方向が見えない、恋人とのはっきりしない関係、なんとなく社会の端くれで渦巻いている疎外感。
希望を失いながらも次の一歩を探す、若者たちの一晩を描いた物語です。
印象的な楽曲とシーンを抜粋しながらストーリーを紹介します。
若者のモヤモヤした気持ちと、”ザ・スミス”の曲が絶妙にマッチしていると感じるはずです。
“Bigmouth Strikes Again”
【YouTube:Bigmouth Strikes Again】
オープニングを華々しく飾るのは、ギターのイントロに勢いを感じるこちらの楽曲。
個人的にザ・スミスの曲でも一番好きな曲です。
本編ではディーンが銃を構え、ラジオ局の部屋の前に立ちながら何やら決意を固めた表情で立っているシーンで流れ始めます。
この曲には多くの言い回しはありませんが、刺激的な歌詞が隠れています。
Bigmouth,
Bigmouth,
Bigmouth strikes again
And I’ve got no right to take my place with the Human race
僕は喋りすぎた
また喋りすぎてしまった
僕は人類としての存在する権利なんてない
開始3分。
いきなり自分を否定するような歌詞からスタート。
“ザ・スミス”の自虐が、若者たちにそのまま描写されています。
「Bigmouth Strikes Again B/W Mon [7 inch Analog]
Smiths (LP Record)
“Oscillate Wildly”
“ザ・スミス”のギター担当、ジョニー・マーによるインストです。
本編ではクレオが“ザ・スミス”解散のニュースを聞き、悲しみに暮れながらディーンのレコード店へ足を運ぶシーンで流れます。
こちらの曲は“The World Won’t Listen”というアルバムに収録されており、文字通り「誰もこんな曲を聴かないよ!」と大人にツッコまれるセリフもあります。
なおこの曲は、別のシーンでも使用されています。
ぜひ本編を観ながら耳を傾けてみて下さい。
“Shoplifters Of The World Unite”
【YouTube:Shoplifters Of The World Unite】
映画のタイトルにもなっているこちらの楽曲は、クレオがディーンの店からカセットテープを万引きし、さっそうと歩くシーンで流れます。
“Shoplifters”とは“万引き犯”のこと。
Shoplifters of the world
Unite and take over
世界中の万引き犯たちよ、
団結し、引き継いでくれ
と、不思議な歌詞が入っているのも特徴です。
当時は、万引きを助長する歌詞だと評されたとの裏話もあったそうです。
万引き犯と言わず、社会の端くれ者たちを励ますような曲と感じませんか?
Shoplifters Of The World Unite(Amazon ミュージック)
“There Is a Light That Never Goes Out”
【YouTube:There Is a Light That Never Goes Out】
この曲は“ザ・スミス”の最も有名だと言っても過言ではないでしょう。
“Take me out”をはっきりと聞き取れる冒頭から始まるこの曲は、非常に示唆の富んだ歌詞になっています。
クレオがパーティーに向かうため、3人の友人に合うシーンで使用されていますが、同時にクレオが“ザ・スミス”の解散を知らせ皆でショックに浸るシーンでもあります。
And if a double-decker bus crashes into us
To die by your side is such a heavenly way to die
And if a ten-ton truck kills the both of us
To die by your side
Well, the pleasure the privilege is mine
もし2階建てバスが僕たちに突っ込んできても
君の隣で死ぬことができるなら、それは最高の死に方だ
もし10トントラックが僕たちをひき殺しても
君の隣で死ぬことができるなら、それは嬉しいし光栄なことだ
“ザ・スミス”が解散(=crash into us/ kill the both of us)しても、この友情が永遠に消えない(=There is a light and it never goes out)のであれば、嬉しい(=the privilege is mine)といった解釈でしょうか。
それにしても、なかなか過激な歌詞だと思いませんか?
There Is A Light That Never Goes Out(ザ・スミス )
“Panic”
【YouTube:Panic】
こちらも“ザ・スミス”の有名な楽曲です。
外では若者がラジカセを自転車の前かごに入れ、ラジオから流れてくるこの曲に合わせて、まるで追悼の意を表しているかのようなシーンで流れています。
Burn down the disco
Hang the blessed DJ
Because the music that they constantly play
It says nothing to me about my life
ディスコを焼き払え、いまいましいDJを吊せ
彼らが流す音楽のせいだからな
僕の人生について何も語りやしない
2分強とかなり短い曲ですが、歌詞はかなり過激ですね。
“I Know It’s Over”
クレオが元カレのビリーと話し合うシーンで流れる曲です。
未練タラタラのビリーとは反対に、クレオは現状に満足していない様子です。
タイトル通り、もう終わったと気づいているけれど…というシチュエーションですね。
And I know it’s over – still I cling
I don’t know where else I can go
Over and over and over and over
Over and over, la …
I know it’s over
And it never really began
But in my heart, it was so real
終わったと分かっているけれど、まだしがみついているんだ
他にどこに行けるのか分からないよ
終わったと分かっているけれど
始まってすらいなかったんだ
でも、僕の心の中では、本物だったんだ
I Know It’s Over(Amazonミュージック)
“Sheila Take A Bow”
最後にご紹介するのは、ラジオを通してディーンからクレオに送った特別な曲です。
このシーンでは、自分に振り向いて欲しいという思いを込めたラブソングと解釈して良いのではないでしょうか。
Sheila take a, Sheila take a bow
Boot the grime of this world in the crotch, dear
And don’t go home tonight
Come out and find the one that you love and who loves you
The one that you love and who loves you
シーラ、お辞儀をしなさい
股間の不浄な世界は蹴り飛ばしてしまえ
今夜は帰らないでおくれ
外に出て、愛し愛される人を見つけなさい
君が愛し、君を愛してくれる人さ
Sheila Take a Bow (2008 Remaster)(Amazonミュージック)
まとめ
“ザ・スミス”の魅力がふんだんに散りばめられた本作品。
自分のあり方や、何となく今の状態や立場に満足できない若者に観て欲しい作品です。
本作品をきっかけに、“ザ・スミス”にも興味を持って頂けたら嬉しいです。
《ライター:Halle》
暇さえあれば、映画観る!がモットー。
映画が好きになったきっかけは、時間を持て余していた大学時代。
うかつにも数々のシリーズ映画に手を出してしまったのです。
Marvel、DC、スター・ウォーズ、トランスフォーマー、パイレーツ…
今ではすっかり映画が生活の一部になってしまいました。
Twitterでも、気ままに映画・海外ドラマネタでつぶやいています。
良かったら覗いてみて下さい(^^)//
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