『スポットライト 世紀のスクープ 』は、「聖職者の性的虐待」と「組織的隠ぺい」に切り込んだジャーナリストの実話映画です。
聞くのもおぞましい、30年間にわたりカトリック教会が隠し続けた子どもの性的虐待と、それを粘り強くスクープしたアメリカの地方紙「ボストン・グローブ紙」を取り上げています。
映画公開は2015年で、その年のアカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞した有名な映画。
アメリカの恥ずかしい歴史と思いきや、その映画から5年経過した2020年10月3日、日本の報道番組「TBS報道特集」で突然紹介されたのです。
それには大きな理由がありました。
かつてボストン・グローブ紙が取り上げたことと、全く同様のことがこの日本でもあったのです。
(冒頭画像:https://www.facebook.com/SpotlightMovie)
米「ボストン・グローブ紙」、深堀りした事件とは?
「ボストン・グローブ紙」は、アメリカ・ボストン市にある地方紙です。
同紙が2003年にピューリッツァー賞を受賞した実際の報道を元に制作された映画、そして今回TBSが特集の題材にした映画とはどんな内容だったのでしょう?
「スポットライト」とは、グローブ紙が特集する記事欄の名前で、記者数名の少数精鋭チームが担当していました。
映画に登場するのは、新しく赴任してきた編集局長マーティ(リーヴ・シュレイバー)以下、リーダーのウォルター(マイケル・キートン)、マイク(マーク・ラファロ)、マット(ブライアン・ダーシー・ジェームス)そして女性記者のサーシャ(レイチェル・マクアダムス)の4人です。
新編集長からチームに持ち掛けられたのは、神父による子どもへの性的虐待事件。
彼は、背後にある地元カトリック教会の組織ぐるみの隠ぺい体質を嗅ぎ取っていたのです。
信者にとって聖職者の声は、神の声…だった!
しかし、カトリック教会は文字通りの聖域。
というのも、アメリカ人は小さい頃から地元の教会と深い関わりを持ち、その中で宗教心を養ってきた歴史があります。
聖職者の声は、そのまま神の声でもあるのです。
神父による、よからぬ思いでの性的誘惑…。
信じてきた歴史が長く深いだけに、そこで神父や教会に問題があるなんて誰も疑おうとしません。
少しの疑念をもっている人がいたとしても、公になることはありませんでした。
(「TBS報道特集」で性的虐待の実名告白した人が、当時声を上げられなかった理由にまったく同様の発言をしています。)
身近な隣人ばかり、「知っていたけど言えなかった…」
さて、勇気をもって取材を敢行する記者たちですが、取材をすればするほど根の深さに驚きます。
最初の事件は、ひとりの神父だけのことだったのですが疑わしい聖職者がどんどん増えてきます。
しかも怪しいのは、容疑者となった神父がいつしか担当の教区を変えられ、うやむやになっていったことです。
被害者と思われる人物を取材するのですが、対象者は同じ地域に住む人間ばかり。
職場仲間や地区内の同じ学校出身者が周囲にいる中で、彼らが一様にいうのは、
「知っていたけど言えなかった…」。
訴えを受けていた弁護士、恐れたのは教会の圧力
一方、性的虐待の事実があったことを勇気を振り絞って訴えていた被害者もいることはいました。
訴えを受けていた弁護士として登場するのは、ガラベディアン弁護士(スタンリー・トゥッチ)。
記者のマイクは取材を嫌がる弁護士にやっと接触し、性的虐待の被害実態を公にするように交渉します。
しかし、弁護士でさえ恐れていたのはもカトリック教会からの影響でした。
弁護士はマイク記者に反発します。
「このことを公にして、結果の責任は誰が取るんだ?」と。
一大スクープの後、一斉に摘発が行われた都市
粘り強く詰め寄るマイクがすかさず言ったのは、「公にしなかった時の責任は誰が取るのか?」と。
これこそ、ジャーナリストたちの社会正義そのものだったのです。
状況証拠をかため、教会幹部にコメントを求める「スポットライト」のメンバーたち。
そこには、とことん保身に走ってノーコメントを貫く教会がありました。
しかし、ボストン・グローブ紙の一大スクープの瞬間は圧巻です。
そして、本編が終わって最後に流れるエンドロールにさらにシビレることに。
なんとこの一大スクープがきっかけとなり、摘発が行われた多くの都市名が流れるのです。
■原作とおすすめの動画配信
※被害者の心の叫びを世に知らしめるため——ただ真実のために——教会の闇を暴くんだ。ボストン・グローブ紙の記者たちが、巨大権力=〈カトリック教会〉の“大罪”を暴いた衝撃の実話!世界中を揺るがせた世紀のスクープ!2003年ピューリッツァー賞〈公益部門〉受賞!【引用:Amazon】
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日本の実態は?明るみに出たのは最近
映画『スポットライト』が公開されたのは2015年ですが、映画の題材となった実際のスクープ報道はさらに古く2002年。
以降、発端となったアメリカはじめヨーロッパでは数々の実態が明るみに出ました。
日本の状況は、2019年になって「日本カトリック司教協議会」の調査で、2002年以降、21件の性的虐待があったと認めることに。
この数が多いか少ないか、また調査した後の対応が十分かどうか。
「報道特集」では、日本でも遅ればせながら告発する人が出てきているとはいうものの、番組に実名登場した男性も女性も同様の被害者はまだまだあるはずと訴えています。
(調査数は「報道特集」が報じた内部資料より。10月3日の報道VTR(約20分)は、YouTubeで「報道特集 性的虐待」で検索できます。
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