
女スパイを扱った映画が静かなブームを呼んでいます。
『ANNA』『ソニア ナチスの女スパイ』の他、少し前では『レッド・スパロー』『アトミック・ブロンド』『マリアンヌ』などが有名です。
これらの映画の主人公は、歴史のうねりの中で図らずもスパイという生き方を選択。
ボロボロになりながらも、最後には幸いにも生き残るという意味で、ある意味、勝者かもしれません。
参考記事:スパイ映画おすすめ3選、女スパイのミッションと生きた政変の時代
しかし、「ボロボロになる」過程は同じでも、組織の謀略にはめられ捨て駒のように殺されたり、あるいは自ら命を絶った女スパイもたくさんいました。
勝者にスポットが当たりがちなスパイ映画の中で、今記事では、悲運にも志半ばにして悲惨な最後を遂げた女スパイを特集してみました。
紹介するのは、5人の女スパイ。
登場する映画と消えていったそれぞれの事情の後に、あえなく命が絶たれたシーンをYoutube動画で掲載しています。
映画のストーリーとしてはネタバレなのと、「閲覧注意」の動画シーンもあるので心してご覧ください。
ブリジット(英国二重スパイ)~『イングロリアス・バスターズ』~

『イングロリアス・バスターズ』は、第二次大戦中に組織された、ユダヤ系アメリカ人で編成された秘密特殊部隊を描いたもの。
レイン中尉8ブラッド・ピット)以下8名、ユダヤ人狩りを行うナチスドイツへの報復をゲリラ的に実施し、非情な手で血祭りにあげるというまさに「ハンター」でした。
彼らにの目下の狙いは、ドイツ帝国の宣伝用映画の上映会に集まる軍幹部を、映画館ごと一網打尽に焼き尽くしてしまおうというもの。
その計画の手引きをするのが、ブリジット・フォン・ハマーシュマルク(ダイアン・クルーガー)でした。
彼女は、表向きはドイツ人女優ですが実はイギリス諜報部が派遣した二重スパイだったのです。
二重スパイであるがゆえ、両方からかけられる嫌疑
ブリジットを交え、映画館焼き討ち作戦の打ち合わせをするためにフランスのバーに集まった「ハンター」メンバーやイギリス将校。
ところが、たまたま同じバーに居合わせたドイツ将校にバレてしまい銃撃戦になります。
疑われたのは、ブリジット。二重スパイゆえに、まずレイン中尉から裏切りを疑われることに。
しかし、それ以上に疑ったのはドイツ親衛隊のランダ大尉(クリストフ・ヴァルツ)でした。
銃撃戦現場を検証した彼は、残された女物の靴からブリジットの関与を疑ったのです。
Youtube動画は、ブリジットに口を割らせようとするシーン。
状況証拠を押さえられらた上で、スパイであることを認めさせようと迫るランダ親衛隊中尉の鬼気迫る尋問に追い込まれるブリジット…。
目を覆いたくなる最後が待っていました。
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イリーナ(ソ連情報部)~『裏切りのサーカス』~



次に紹介する悲運の女スパイは、ソ連情報部の「イリーナ」(スヴェトラーナ・コドチェンコワ)。
登場する映画『裏切りのサーカス』は、あまりにも有名なスパイ映画です。
東西冷戦下で、さまざまな情報合戦を切り広げていた、旧ソ連情報部とイギリス情報部(MI6=通称サーカス)。
MI6内では、数年、極秘情報がなぜかソ連に筒抜けになっている危惧を抱いており、サーカス内の密通者=「モグラ」をあぶり出すことに腐心していました。
責任者として秘密裏に呼び戻されたのは、サーカス元幹部のスマイリー(ゲイリー・オールドマン)。
信頼すべき身内幹部の中から密通スパイを探すという非情なミッションが描かれ、息を飲むシーンの連続です。
さて、「イリーナ」はそんな背景の中に登場します。
「情報源」の一線を越えた時、訪れた悲しい不幸
MI6はさまざまな情報収集のために海外に諜報員を送り込んでいました。
その中のひとり「ター」(トム・ハーディ)は、モグラに関する情報を持つとされるソ連情報部の女スパイ「イリーナ」に接触。
ターは、イリーナから信頼すべき情報を得る過程で、イリーナと恋仲になるほどかかわってしまいます。
そして、彼女から提案されたのが、モグラの情報と引き換えに自身のイギリスへの亡命希望でした。
早速、この条件を本国のサーカスに打診するのですが、サーカス内のモグラも当然、知ることとなります。
まもなくして、イリーナと連絡を取り合っていたターは、イリーナの消息がピタリと途絶え、殺されてしまったことを知るのです。
(映画では、面通しさせられたMI6の目の前で無残に銃殺されます。)
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参考記事:シビレル映画『裏切りのサーカス』、二重女スパイを闇に葬ったソ連情報部!
デルフィーヌ(フランス情報部)~『アトミック・ブロンド』~



『アトミック・ブロンド』も、舞台は東西冷戦下。
スパイ名簿を持ったまま東ドイツに逃げ込んだ、KGB(ソ連情報局)スパイを追うイギリスMI6の諜報員の話です。
画像左が、主人公のロレーン(シャーリーズ・セロン)
映画ではロレーンの暗躍と凄味が目立つ中、悲劇の女スパイとなったのはロレーンの情報源でもあったフランス情報局(DGSE)のデルフィーヌ・ラサールでした。
演じるのは、ソフィア・ブテラ。
(トップ画像:引用・https://www.facebook.com/AtomicBlondeMovie 今、『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』や『キングスマン』などで、売り出し中の女優でありダンサーです。)
しかし、無残にも味方と信じていた身内に絞殺されてしまうのです。
西ドイツからベルリンの壁を越え、東ドイツへ潜入するのは至難の技でしたが、手引きしたのは、MI6ベルリン支局のデヴィッド・パーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)でした。
しかし、ロレーンはどこか胡散臭いパーシヴァルを信用していません。
心を許した諜報員の、正体と結末は?
そこへ近づいてきたのが、デルフィーヌでした。
最近、消されるスパイが多いため、その調査を命じられていたのです。
ロレーンは、近づいてきたデルフィーヌをスパイと察するのですが、まだまだ未熟さの残る彼女にこころを許し愛し合う仲になります。
そんな中、ロレーンは自分の行動歴がKGBに筒抜けなことに気付きます。
情報漏れの原因は、味方のはずの同僚パーシヴァルであることを察知、そしてあろうことかパーシヴァルがデルフィーヌとも通じていたことに気付くのです。
すぐに察したのは、パーシヴァルによるデルフィーヌの口封じ。
ロレーンはデルフィーヌの危険を察しアパートに向かうのですが、部屋に入った時見つけたのはすでに部屋に横たわる彼女でした。
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アトミック・ブロンド スペシャル・プライス [ シャーリーズ・セロン ]
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マリアンヌ(仏領モロッコ潜入スパイ)~『マリアンヌ』~



『マリアンヌ』は、第二次大戦中にドイツ軍に占領された仏領モロッコに潜伏し、連合軍側の工作員に橋渡しをした女スパイの物語です。
主人公は、映画タイトルでもあるフランス国籍のマリアンヌ(マリオン・コティヤール)。
連合軍側のカナダ兵士マックス(ブラッド・ピット)と偽装夫婦を装いながら、パーティ会場でドイツ軍大使を暗殺するのがミッションでした。
激戦を潜り抜け作戦は成功し、一旦、戦線を離脱した二人。
歯車が狂い出すのはその後で、待っていた悲しい運命が涙を誘います。
結婚した偽装夫婦に、まさかのスパイ容疑
偽装夫婦を演じていた二人ですが、ミッションが終わってみれば、二人にはいつも間にか本当の愛情が芽生えていました。
そしてめでたく結婚、子どもも生まれます。
しあわせの絶頂のはずだったのですが、諜報活動を続けるマックスに疑いがかかります。
上司から言われたのが、「妻からドイツ側に機密情報が流れている。」と。
マックスの調査で判明したのは、妻が過去を偽っていたのと子どもを人質に脅迫され、やむなく情報を横流ししていたこと。
唖然とするマックス。
すべて家族のためだったと言い訳するマリアンヌだったのですが、最後、マックスが死ぬかマックスが妻を殺すかの2択を迫られ、逃避行を前にして、自らの命を絶ってしまうのでした。
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サビーヌ(女ヒットマン)~『ミッション:インポシブル №4』~



さて、物語は一気に現代に戻ります。
ご存じ、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、トム・クルーズ主演の人気シリーズ、第4作目。
ここに登場する女スパイ、実際には報酬で動くヒットマン役がサビーヌ・モローです。
演じるのは、『007シリーズ』でも謎の女として登場するレア・セドゥ。
(ちなみに、彼女は今記事の『イングロリアス・バスターズ』のはじめのころにも登場しています。)
幼さと冷淡さが同居した、ミステリアスな表情で登場するサビーヌ。
彼女が照準を合わせているのは、イーサン・ハント(トム・クルーズ)が所属していたIMF(不可能作戦部隊)のエージェントです。
核兵器発射コードのファイルを奪ったことから、IMFに追われる身となります。
ドバイ、ブルジュ・ハリファ一からの墜落
『ミッション・インポッシブル』シリーズでは、凄腕ヒロインが毎回登場するのですが、このシリーズはポーラ・パットン。
サビーヌに殺されたエージェントの同僚ジェーン・カーター役で、サビーヌは彼女の復讐戦を受けることに。
ドバイの超高層ビル、ブルジュ・ハリファ一の一室で行われた死闘シーンは一躍有名となりました。
盗んだ核爆弾発射コードを売るために現れたサビーヌと、ジェーン・カーターがし烈な激闘を展開します。
暗殺者としてスキのないさすがのヒットマン・サビーヌも、剛腕のジェーンに蹴落とされ、あえなく119階から落下していきます。
いまや主役級となったレア・セドゥが演じた数少ない「殺され役」。
ただ、彼女が間違いなく死んだかどうかは今も謎のままです。
▶『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』見どころとキャスト
まとめ~嘘がバレる時~
いかがでしたでしょうか?
イングロリアス・バスターズのブリジットもそうでしたが、『ソニア ナチスの女スパイ』に登場するソニアも実は俳優の顔でスパイ活動を行っています。
スパイとは、嘘をどこまで演じきれるか試されるという意味では、俳優を隠れ蓑にするというのもわかる気がします。
しかし、あの『アトミック・ブロンド』のロレーンがデルフィーヌから、「本音を言うときは目が変わるのね。」と言われてハッとするシーンは嘘がつくのが難しいことを如実に物語っています。
そんな苦労の重ねてきた女スパイが、嘘をつけないところまで追い込まれ、あっけなく殺されてしまうところに悲哀を感じずにはおられません。
ぜひ、ご覧になって下さい。