《目次:「アートが題材の映画」10選》
Ⅲ.画家の人生を垣間見る映画3選
①The Electrical Life of Louis Wain
『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』:生きづらさを抱えた現代人、響く画家の生涯
映画タイトル | ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ |
原題 | The Electrical Life of Louis Wain |
監督 | ウィル・シャープ |
出演 | ベネディクト・カンバーバッチ、クレア・フォイ、アンドレア・ライズボロー他 |
公開日 | 2022年/111min |
イギリスの上流階級に生まれたルイス・ウェイン(ベネディクト・カンバーバッチ)は早くに父を亡くし、新聞に絵を描くイラストレーターとして一家を支えていました。
やがて妹の家庭教師・エミリー(クレア・フォイ)と恋に落ち、結婚したルイスでしたが、ほどなくしてエミリーは末期がんの宣告を受けてしまいます。
そんなある日庭に迷い込んできた猫をピーターと名付け、ルイスは残されたエミリーとの日々を大切に生きながら、彼女のためにその猫の絵を描き始めるのです……。
ルイス・ウェインが生きた時代、イギリスで猫は不吉の象徴として忌み嫌われていました。
そんな中でルイスは生涯にわたって猫の絵を描き続け、すっかり猫の社会地位向上に貢献しました。
なんと夏目漱石が『吾輩は猫である』を書くきっかけは、ルイスの絵だったとも言われているんです。
ルイスの生涯を真っ向から描いた本作は、彼がいかに苦難に満ちた人生を送ったかがわかり観ていて辛くなる部分も。
「自分らしく生きること」に苦しみながらも、猫を描くことを通して愛する人との繋がりを感じ続けたルイス。
エミリーの言い残した「世界の美しさ」に気がつく彼の姿を見れば、日常のほんのささいなことを美しいと思えるようになるはず。
■「ルイス・ウェイン」の作品集です【管理人・選】
②TOVE
『TOVE/トーベ』:世界的キャラクター、ルーツは燃えるような「愛」
映画タイトル | TOVE/トーベ |
原題 | TOVE |
監督 | ザイダ・バリルート |
出演 | アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネン、シャンティ・ロニー他 |
公開日 | 2021年/103min |
1944年戦争下のヘルシンキで、トーベ・ヤンソン(アルマ・ポウスティ)は子供たちのためにささやかな物語を創造し、「ムーミン」というキャラクターを描き始めます。
戦後、地味なアトリエでの暮らしを始めたトーベ。
やがて自分の考えと美術界の潮流にズレがあるという葛藤が生まれますが、舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラー(クリスタ・コソネン)と出会ったことでトーベの人生は大きく変化していきます。
自由を渇望し、禁じられた愛に身を投じるトーベはムーミンとともに成長していくのです。
■「トーベ」と「ムーミン」参考メディア【管理人・選】
※フィンランドを代表する作家トーベ・ヤンソンによる「ムーミン谷」の物語は、誕生から70年以上を経てなお、世界中の人々を魅了しています。ムーミンの物語には、どんなキャラクターが登場し舞台となっているムーミン谷とは、いったいどんなところなのでしょう。また、作者はどんな生涯を送ったのでしょう。このムーミンの世界の魅力を、英国の児童文学作家が愛をこめて解説しました。【引用:Amazon】
白くて丸々とした見た目が可愛い「ムーミン」は、世界中で愛されているキャラクター。
そんなムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンのルーツについて丁寧に描いた作品です。
トーベは自分自身をモデルとしてムーミンを創り出し、「ムーミンは愛を一番大事にしていて、愛を奪われると怒る」と語ったことがあるそう。
本作を観るとたしかにトーベの人生は「愛」に翻弄されていたと言えます。
芸術家でありながらトーベのことを認めてくれない父、10年近く恋愛関係にありながら破局したヴィルタネン、そして当時は禁断と言われた女性同士の恋仲になるヴィヴィカ。
周囲の人との関係性や愛がトーベを悩ませると同時に画家として成長させ、ムーミンというキャラクターを形成していったと考えられます。
ちなみに孤独を愛する旅人・スナフキンのモデルはヴィルタネンだと言われており、トーベとヴィルタネンは破局後も生涯交流を続けたそうですよ。
■「ムーミン」生みの親「トーベ」参考本【管理人・選】
※10代でイラストレーター、画家としてアーティストのキャリアをスタートさせたトーベは、戦禍の中で青春時代を過ごしている。最初はスノークという名だったムーミンは、そんな状況下で理不尽に対する怒りや自由への希望、表現への夢など、さまざまな想いの中から生まれてきた生きものだった。【引用:Amazon】
③Cézanne et moi
『セザンヌと過ごした時間』:2人の芸術家、友情と孤独そして別れ
映画タイトル | セザンヌと過ごした時間 |
原題 | Cézanne et moi |
監督 | ダニエル・トンプソン |
出演 | ギヨーム・カネ、ギョーム・ガリエンヌ、アリス・ポール他 |
公開日 | 2017年/117min |
1852年の南フランスで、後のベストセラー作家エミール・ゾラ(ギヨーム・カネ)と、「近代絵画の父」と呼ばれることになるポール・セザンヌ(ギヨーム・ガリエンヌ)が出会います。
育った境遇が全く違う2人は、芸術家を目指すという共通の夢で強い絆を結んでいくことに。
やがてゾラはひと足先に小説家となって成功を掴みますが、セザンヌはサロンにも落選し続けて転落の一途をたどります。
そしてゾラがある画家を主人公にした新作を発表したことで2人の友情に決定的な亀裂が入ってしまい……。
互いの芸術を追い求めたゾラとセザンヌがたどりつく境地とは?
■『セザンヌと過ごした時間』参考ミニ知識【管理人・選】
※近代絵画の父セザンヌと自然主義文学の旗手ゾラは中学生の同級生で,文学と絵画のことを語り合う親友でしたが,40代半ばで絶交したといわれます。その原因は,セザンヌをモデルにした画壇小説「作品」で主人公が画家への夢をあきらめ自殺する内容にあったとされてきました。しかし,本当にそうだったのか? 著者は,「作品」を丹念に読み解き,二人の手紙やゾラの美術批評などを丹念に調査することで,おどろくべき事実を明らかにします…。【引用:Amazon】
40年もの間、熱い友情を築いていたゾラとセザンヌ。
そんな2人がゾラの小説『制作』をめぐって対立したことは、芸術方面に詳しい人なら知っているでしょう。
ゾラとセザンヌの青春と苦悩、衝突を描いた本作は、映画全体がエクス=アン=プロヴァンスの優美な景観で溢れており、まるでセザンヌの絵画の世界に足を踏み入れたような気分にさせてくれます。
現存しているゾラとセザンヌそれぞれの別荘や、アトリエ代わりに借りたビベミュス石切り場なども登場。
夏の光に照らされたプロヴァンスの明るさと、芸術家たちの深い孤独の闇との対比に、思わず胸を打たれます。
■「セザンヌ」と「エクス=アン=プロヴァンス」参考本【管理人・選】
※ポール・セザンヌ(Paul Cézanne、1839年 – 1906年)は、フランスの画家。(中略)モネら印象派の画家たちと同時代を生きましたが、ポスト印象派の画家と見做されています。キュビスムをはじめとする20世紀の美術に多大な影響を与え、しばしば「近代絵画の父」と呼ばれています。【引用:Amazon】
※かわいらしい村々が点在するリュベロン、リゾート気分を味わえる島や美しい港町マルセイユがある地中海沿岸、画家セザンヌも暮らした芸術の都エクス・アン・プロヴァンス、城壁に囲まれた歴史深いアヴィニョンなど、バラエティに富んだ町や村をめぐる旅を楽しめる1冊です。
番外編:フィクションだからこそ夢があるアート映画
①Midnight in Paris
『ミッドナイト・イン・パリ』:アート好きの夢、ロマンチック・ストーリー
映画タイトル | ミッドナイト・イン・パリ |
原題 | Midnight in Paris |
監督 | ウディ・アレン |
出演 | キャシー・ベイツ、エイドリアン・ブロディ、カーラ・ブルーニ、マリオン・コティヤール他 |
公開日 | 2012年/94min |
ハリウッドで脚本家として成功を収めたギル・ペンダー(オーウェン・ウィルソン)は、どこか満たされない日々を送っていました。
婚約者のイネス(レイチェル・マクアダムス)と彼女の両親とともにパリを訪れたものの、全く話が合わず、ギルは夜のパリを1人で徘徊することに。
すると1台のクラシックカーが現れて思わず乗り込むと、たどり着いた先はギルの愛してやまない20年代のパリで……。
憧れの地でギルはヘミングウェイやピカソなどの芸術家と交流を深めていきます。
美しいパリの風景を舞台に、歴史的な芸術家たちが次々と登場する本作。
小説家のF・スコット・フィッツジェラルドに、画家のサルバドール・ダリ、そしてヘミングウェイやピカソ、マティス、ゴーギャンなど……。
どの芸術家たちもしっかりと特徴を捉えている点が面白く、演じる役者がまるで本人に思えるほど。
パリの夜を包む芸術家たちの熱気にあてられた気分になれる作品です。
あなたは一体何人の芸術家たちに気がつくでしょうか?
なお映画のポスターはゴッホの「星月夜」を使っていますが、作中にゴッホは登場しません。
夢と理想を追い求める主人公のギルがゴッホと重なっているという意味なのかもしれませんね。
■『ミッドナイト・イン・パリ』参考ミニ知識【管理人・選】
ゴッホはなぜ星月夜のうねる糸杉をえがいたのか(マイケル・バード著)
※最初のアーティスト/洞窟の画家/ツタンカーメンの墓の職人たち/古代ローマの彫刻家/古代ローマの画家/アンコールワットを築いた人々/ジョット/ドナテッロ/ヤン・ファン・エイク/レオナルド・ダ・ヴィンチ/アルブレヒト・デューラー/ミケランジェロ/ブリューゲル/レンブラント/カラヴァッジョ/ベラスケス/フェルメール/ゴヤ/葛飾北斎/タルボット/ターナー/クールベ/モネ/ゴッホ/セザンヌ/シャガール/マルセル・デュシャン/カンディンスキー/フリーダ・カーロ/ピカソ/ポロック/キーファー/アイ・ウェイウェイ【引用:Amazon】
まとめ
芸術を通して描かれるさまざまな物語。
あなたはどの作品に心惹かれましたか?
ご紹介した映画を観たら、きっと美術館に足を運んでアートと対話したくなるはず!
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ウェス・アンダーソン作品の世界観が大好き!ライターの「もな」です。
映画にどハマりしたのは、小学生の頃に『ロード・オブ・ザ・リング』を観てから。
それからというもの、映画は私の人生にとって欠かせないもので、大学では映画学を専攻しました。
私の書く記事が、誰かと素敵な映画との出会いの場になったら嬉しいです。
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