こんにちは、今回はグレタ・ガーウィグ監督の新作映画『バービー』をより楽しむためのキーワード&作品をご紹介します。
エンタメ色の強い『バービー』ですが、その華やかさの裏でさまざまな示唆に富んだつくりになっています。
それを読み解くのもまた楽しいということで、今回は関連作品とともに、『バービー』に込められた仕掛けを5つピックアップしていきます!
(※直接的なネタバレは含みませんが、鑑賞済みにお読みいただくのがおすすめです。)
(冒頭画像:https://twitter.com/BarbieMovie_jp/)
1.映画冒頭、あのSF超大作のオマージュ!
冒頭の、ギャグかと思うような「巨大バービー人形」の出現シーンは、スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』の冒頭シーンである、「人間の猿がエイリアンのモノリスに遭遇するシーン」をわかりやすくパロディ化したものとなっています。
『2001年宇宙の旅』については、ガーウィグ監督も『バービー』製作に影響を受けた作品とLetterbox(映画特化SNS)でもコメント。
『2001年宇宙の旅』は冒頭の場面で人類進化の幕開けを表現していますが、『バービー』においては映画の幕開けはもちろん、女児向け人形界のゲームチェンジャ―となったバービー誕生から「女性の夜明け」の到来を感じさせるものとなっています。
しかしこのバービー自身が、「女の子の新しい憧れの的=先駆的」であると同時に「持ち主の女の子に劣等感を抱かせる存在=排他的・後進的」という、なんとも矛盾に満ちた存在というのが面白いところ。
「この映画は一体何をやろうとしているのだろう?」と観客をワクワクさせる掴みになっています。
■参考:『2001年宇宙の旅』【管理人・選】
※あまりにも有名なスタンリー・キューブリック監督の代表作であり、SF映画史上に燦然と輝く名作。400万年前の人類誕生以来、人類の進歩の過程で必ずその姿を現す黒石板モノリス。この謎の物体を解明するため、5人の科学者を乗せた宇宙船ディスカバリー号が木星に旅立つ。【引用:Amazon】
2.ケンの姿に、マッチョイズムが…
「マッチョイズム」とは、男性たちが自身の肉体的な能力や筋力等の、いわゆる「男らしさ」を重んじる思想のことです。
男性優位主義の「マチスモ」に、英語の「イズム(主義)」を足してできたことばです。(和製英語)
『バービー』でケンの姿で魅せたライアン・ゴズリングの「これぞマッチョイズム」な筋肉美はすでに『ラブ・アゲイン』で実証済み。
『バービー』でケンが建国しようとしていた「ケンダム」も、レザーやらスタッズやら筋肉やら…かなりマッチョイズムを意識したルックになっていましたね。
ただ、注意しておきたいのは行き過ぎた「マッチョイズム」が時には男性たちの健康や安全を軽視する行動に繋がる可能性もあるということ。
そして、これがすべての男性に当てはまるわけではなく、あくまで一部の人々の行動傾向を指すものだということです。
また『バービー』では面白おかしく描かれる「男らしさ」のオンパレードですが、「よくよく考えると女性でも似たような思想はあるな…」と少し冷静にさせられてしまう、妙な引力があるのが『バービー』なのです。
■参考『ラブ・アゲイン』作品情報【管理人・選】
※実力派キャストたちによる、心に響くハートウォーミング・ラブコメディ。イケダンになれば、もう一度妻の愛を取り戻せるのか?
3.バービーに熱く語る、マンスプレイニング!
「マンスプレイニング(mansplaining)」とは、男性が女性に対して、自分の知識をひけらかすかのように説明やアドバイスをする行為。
また無意識のうちに男性が女性に対して偉そうに語ったり解説を行うこと。
「man(男性)」と「explaining(説明する)」を掛け合わせてできた造語です。
本作では、『ゴッドファーザー』について熱くバービーに語るケンたちがまさしくマンスプレイニングしていました。
ただし、重ねてになりますが全ての男性がこのような行動をするわけではなく、女性同士や他の性別間でも同様のコミュニケーション問題は起こり得ることです。
『バービー』はマッチョイムズにしろ、マンスプレイニングにしろ、ジェンダー描写について寄せられるであろう意見は織り込み済みです、と言わんばかりに観客に迫ってくるのがイイところです。
作り手の余裕すら感じます。
■参考『ゴッドファーザー』作品情報【管理人・選】
※アメリカで絶大な権力を握るコルレオーネ・ファミリーが崩壊の危機に立たされる様を描いた作品。このシチリア島出身ファミリーが手を染める犯罪ビジネスについても描かれている。【引用:Amazon】
4.ビルケンシュトックか、ハイヒールかー
「ビルケンシュトック(Birkenstock)」は、創業1774年のドイツを拠点とするフットウェアブランドです。
ブランドのファッションに込められた理念は、「快適さ、健康、環境への配慮」。
作中でマーゴット・ロビー演じる「正統派」バービーの体に起きた“異変”に対し、「変てこ」バービーは2つの選択肢から選ぶよう迫ります。
ひとつは、このまま自分も変てこになりながらバービーランドに在留する道。もうひとつは、現実世界に行って、異変の原因を突き止める道。
そのシーンで「変てこ」バービーが再現しているのは、映画『マトリックス レザレクションズ』に登場する”赤いカプセル・青いカプセル”のシーンです。
映画『バービー』でバービーに与えられた選択肢は、ピンク色のファンタジー世界の象徴“ハイヒール”か、文字通り地に足の着いた現実世界の象徴“ビルケンシュトックのサンダル”か…
元ネタを知っていると面白さ倍増のシーンです。
■参考:『マトリックス』「ビルケンシュトック}【管理人・選】
※もし世界がまだ仮想世界[マトリックス]に支配されていたとしたら――?ネオは、最近自分の生きている世界の違和感に気付き始めていた。やがて覚醒したネオは、[マトリックス]に囚われているトリニティーを救うため、何十億もの人類を救うため、[マトリックス]との新たな戦いに身を投じていく。【引用:Amazon】
※夏の足元といえばサンダルだが、40オヤジになってビーサンはいただけない。やはり大人には然るべきサンダルがしっくりくる。そこで推したいのがビルケンシュトック。今なお絶大な人気を誇る“ビルケン”の歴史、機能、そして心地よさの秘密を紐解いた!【引用:Amazon】
5.女性解放のアイコン、「シャネル」の起用
『バービー』終盤に登場するバービーのファッションは、ヴァレンティノ、プラダとハイブランド尽くしのラインナップになっています。
中でも注目したいのは、シャネルの起用。
ブランド生みの親※ココ・シャネルは時代に先駆けてコルセットを廃止し、シンプルなラインの服や男性の服を着ることで女性の快適さと自由を追求しました。
そんな「古い価値観にとらわれない自由で自立した女性像」を理念とするブランド・シャネルを、本作で主体性を大事に生きようとするバービーが身にまとうというのは非常に象徴的でもあります。
シャネルについて詳しく知りたい方は彼女の自伝的映画『ココ・アヴァン・シャネル』をチェック。
■ココ・アヴァン・シャネル【管理人・選】
※その小さな少女は、フランスの田舎にある孤児院に姉と一緒に入れられて、毎週日曜、決して来ることのない父親の迎えをひたすら待ち続けた。ナイトクラブの歌手になり、酔った兵士を相手にか細い声で歌い、つつましいお針子として、田舎の仕立屋の奥でスカートのすそを縫う日々…。【引用:Amazon】
※孤児院から人生をはじめ、自力で莫大な富と名声を手にした世界的ファッションデザイナー、ココ・シャネル。彼女はコレクションのショーの最後をウエディングドレスで飾ったことがなかった…。
まとめ
映画『バービー』をより楽しむためのキーワードと作品をご紹介してきました。
『バービー』ワールドにもっと浸りたい方も、次観る映画を決めかねている方も良ければチェックしてみてください。
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