今回ご紹介する映画はフランス映画『アデル、ブルーは熱い色』(13)です。
第66回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した、女性同士の恋愛を描いた映画で、フランス人気コミックが原作です。
本作は、過激な性行為描写を含む点に注目が集まりがちなのですが、人が恋に夢中になっていく様子を丁寧に、かつ熱量を持って描いた素晴らしい作品です。
ここでは、その魅力やより作品を楽しめるポイントについて説明します。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/laviedadele.lefilm/)
『アデル、ブルーは熱い色』あらすじ
女子高生のアデルは、初めての彼氏ができるも、すぐに別れを告げてしまう。
その後、アデルは街中で青髪が美しい美大生のエマに出会い、運命的な恋に落ちる。
やがてレズビアンバーで再会したアデルとエマは互いに惹かれ合い、2人は一緒に暮らし始めるも、ある時アデルはエマが芸術関係の女性と親しそうにしているのを目の当たりにして不安を募らせていく。
主演はアデル役をアデル・エグザルコプロス、エマ役を『007』シリーズのボンドガール役等でお馴染みのレア・セドゥが演じる。
●アデル・エグザルコプロス(Adèle Exarchopoulos)
誕生日:1993年11月22日生まれ
星座:いて座
身長:173cm
出身:フランス・パリ
▶おすすめ代表作品
『アデル、ブルーは熱い色』における恋愛
本作では女性同士の恋愛模様が描かれるのですが、性的マイノリティの立場に対する価値観はアデルとエマで異なります。
アデルは女性を好きになるのはエマが初めてですが、エマはレズビアンなので女性のみを恋愛対象としています。
また、アデルはエマと交際中、2人の姿を見た学校の友人から「女性と付き合っている」事を責められるシーンがありますが、エマは自身のセクシュアリティをカミングアウトしており、アデルに対してもオープンな関係を望んでいます。
この二人の価値観の違いはどこからくるのでしょうか。
アデルとエマの価値観、言葉さえなければ…
本作においてエマの価値観がはっきりとわかるシーンが、エマがアデルにサルトルの著作『実存主義とは何か』を勧める場面です。
エマは台詞でもサルトルの有名な「実存は本質に先立つ」というフレーズを引用しており、これがエマの行動原理となっています。
つまり、簡単にまとめると、エマは自分の人生における選択や行動1つ1つに責任を持つことがよいと考え、それを実行する人間なのです。
また美術関係の家に育ち、美大にも通うエマは根っからのアーティスト気質でもあります。
「実存主義とは何か」Jean Paul Sartre (著)
対して、アデルは人生における行動指針などは無く、労働者階級の家で育っています。
特に生活環境の違いがわかるのが、食事シーンです。
労働者階級に属するアデルの家では安価で簡単に作れるトマトソースのスパゲティが出され、アート関係の仕事をするエマの家では繊細な食材である生牡蠣が食卓に並んでいます。
台詞ではっきりと示すことなく、お互いの生活レベルの差を表現している素晴らしい演出です。
アデルとエマは運命的に出会い、磁石が引き合うように互いの距離を縮めたかのように見えても、根本的に違う生き物だという当たり前の事実が示されているのです。
2人が心を通わせた後の激しい性行為は、アデルとエマという別個の人間が1つになる瞬間のきらめきや奇跡のような美しさがありながら、
「言葉さえ無ければ価値観の違いに気づくこともないのでは」、とも思わされるものがあります。
とある出来事をきっかけに二人の価値観の違いが決定的になり、関係が悪化してしまうのですが、結局異性愛も同性愛も関係なく、恋の終わりは価値観の違いから始まるのだとしみじみ感じられる映画でもあります。
●レア・セドゥ(Léa Seydoux)
誕生日: 1985年7月1日生まれ
星座:かに座
身長:168㎝
出身:フランス・パリ
CMブランド:ルイ・ヴィトン(バッグ、フレグランス等)
▶レア・セドゥのおすすめ代表作
007 スペクター (予告編:Amazon) (映画ポスター:楽天)
※2作連続でボンド・ウーマンで登場は快挙!
ブルーは熱い色、ラストシーンが語るもの
最後に、タイトルにも入っているブルーについて触れます。
ブルーは本作のどこかで常に使われている色であり、風景や小物などにさりげなく散りばめられています。
この色使いからは、エマに恋するアデルを象徴しているようにも取れます。
誰かにどうしようもなく惹かれている時、その人の存在を頭の中で常に意識してしまうように、
アデルは青髪のエマに恋をして世界にブルーが現れるようになったのではないでしょうか。
本作ラストシーンのアデルはブルーのドレスを着ているのですが、エマのカラーである青をまとうアデルはとても印象的です。
このアデルの姿について考察してみるのもまた楽しいと思います。
《原作者の紹介》
●ジュリー・マロ(Julie Maroh)
誕生日: 1985年9月1日生まれ
出身:フランス
▶原作タイトル:「ブルーは熱い色」
フランス北部出身。BD作家。アングレーム市在住。ベルギー・ブリュッセルのサンリュック学院卒業後、デビュー。
いくつかの自費出版を経て、本書『ブルーは熱い色(原題:Le blue une couleur chaude)』を制作。
2011年アングレーム国際マンガフェスティバル大衆賞をはじめとして数々の賞を獲得。
さらに本作を原案とするアブデラティフ・ケシシュ監督の映画『アデル、ブルーは熱い色』は2013年度カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞。同年9月新作『Skandalon(ギリシャ語で「罠」)』を発表。あるロックスターの禁断の物語を描いている。【引用:Amazon】
まとめ
『アデル、ブルーは熱い色』は、誰かを愛することで世界の見え方が変わってしまうあやうさと、
それでもどうしようもなく誰かを愛せずにいられず、愛し合うよろこびを求めてしまう人間の姿を丁寧に描いた作品です。
筆者は既婚者でもう恋愛をすることは恐らくないのですが、個人的には、たとえ人生が暗闇に包まれるような感覚を味わっても、
誰かを愛することは人生を豊かにするのだと思える作品だと捉えています。
何度見ても若い恋愛のみずみずしさをもらえる映画です。
また、本作は人物をクローズアップにした画作りが多用されている映画なのですが、ここまで観客を引き込むことができるのは主演二人の演技力の高さゆえなのだと思います。
特にレア・セドゥは青色のベリーショートと彼女の色気のある雰囲気がエマというキャラクターをさらに魅力的にさせていたと思います。
気になりましたらぜひご覧になってください。
参考記事:『007』のレア・セドゥを堪能!本国フランス版『美女と野獣』&未公開新作もいかが?
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