燦々と照らされた北イタリアの避暑地で美しき青年の恋心をとらえた大ヒット映画『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督×ティモシー・シャラメ主演の再タッグで注目を集める最新作。
『ボーンズ アンド オール』が2023年に公開されました。
『胸騒ぎのシチリア』(15)から監督の作品は映画館で観て来ましたが、どの作品も期待以上の余韻を残してくれます。
その中でも、本作の題材はシンプルかつ興味深く、絶対に記事にしたいという衝動に駆られました。
アカデミー賞で気になる作品が多い時期ですが、映画館で観る機会を絶対に観逃してほしくない!そんな想いで記事を書かせていただきます。
『ボーンズ アンド オール』:あらすじ
18歳の少女マレンは、生まれつき人を喰べてしまう衝動をもっていました。
抗えない宿命を背負うマレンは、同じ秘密を抱えるリーという若者と出会います。
人を喰べたくないのに衝動を抑えることが出来ない葛藤を抱える2人は次第に惹かれ合います。
しかし、旅先で出逢う同族の謎の男が、二人を危険な運命へと導いてしまう…
孤独を抱えた人物を、演じる俳優たち
ここで紹介する登場人物は全員”人喰い”、つまり劇中では”イーター”と呼ばれる人たちです。
重要な人物である3人に絞りましたが、他にもマイケル・スタールバーグやクロエ・セヴィニーなど、演技力の高い人が脇を固めており、作品のクオリティを高めています。
18歳の少女マレン(テイラー・ラッセル)
テイラー・ラッセルは、A24の『WAVES/ウェイブス』(19)で注目を集めました。
2023年現在28歳なのですが、あどけなさを残した演技は18よりも若く見えるから不思議。繊細な感情を見事に表現しています。
これからの出演作にも目が離せない新進気鋭の若手女優です。
●テイラー・ラッセル(Taylor Russell)
誕生日:1994年7月18日生まれ
星座:かに座
身長:164cm
出身:カナダ・バンクーバー
▶おすすめの代表作品
17歳で家を出た青年リー(ティモシー・シャラメ)
今ハリウッドで最も注目を集めている若手俳優ティモシー・シャラメ。
監督は「ティモシーが出演しなければ、この作品は撮れない」と言った程、本作では欠かせない人物です。
2023年は、若きウィリー・ウォンカを演じる『Wonka』が控え、また、『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)の続編として大きな期待が寄せられる『Dune: Part Two』にも出演します。
関連記事:謎のチョコレート工場長の前日譚映画『ウォンカ』、主演ティモシー・シャラメが歌って踊る!
●ティモシー・シャラメ(Timothée Chalamet )
誕生日:1995年12月27日生まれ
星座:やぎ座
身長:182㎝
出身:アメリカ・ニューヨーク
▶おすすめの代表作品
君の名前で僕を呼んで(予告編:Amazon) (原作アンドレ・アシマン:楽天)
一人称を「サリー」と呼ぶ、奇妙な老人サリー(マーク・ライランス)
過去にアカデミー賞受賞をした実力派俳優マーク・ライランス。
クリストファー・ノーラン監督の大ヒット作『ダンケルク』(17)や、スティーヴン・スピルバーグ監督のSFアドベンチャー『レディ・プレイヤー1』(18)、『ブリッジ・オブ・スパイ』などにも出演しています。
巧妙な視線や話し方の演技は、原作よりも遥かに奇妙に見せます。
劇中のサリーにはいくつもの複雑な感情を持ちました。
彼の行動の裏には孤独に生き続けた辛い過去があるということを忘れずに、是非観ていただきたいです。
ルカ・グァダニーノ監督が描く、”社会ののけ者”への共感
監督は同性愛者ということを公表していますが、幼少期はイタリアのカトリックが大半を占める街で育ったと言います。
幼少期は、自分がアウトサイダーと感じ、孤独を抱えて生きてきたことが予想できます。
「社会の片隅で生きる人々や権利を剥奪された人々に、私はえも言われぬ魅力を感じ、心打たれる。
私のつくる映画はすべて社会ののけ者を描いているけれど、『ボーンズ アンド オール』の登場人物にも共感を覚えた」
【引用:パンフレット】
監督は、代表作『君の名前で僕を呼んで』では80年代の同性愛者の青年、『サスペリア』ではベルリンのバレエ団に飛び込むアメリカ女性、『胸騒ぎのシチリア』では声帯の手術を受けた世界的なロックスターを主人公としてとらえました。
決まって彼が描く”社会ののけ者”たちには、リアルな題材ではなくでもどこか共感を覚えます。
それは、孤独を感じたことがある人やマイノリティな意見を持ったことがある人には当てはまる部分があるからではないでしょうか。
●ルカ・グァダニーノ監督(Luca Guadagnino)
誕生日:1971年8月10日生まれ
星座:しし座
出身:イタリア・シチリア州
▶おすすめの代表作品
”人喰い”について考えてみる
”人喰い”や”カニバリズム”という表現を聞くと残忍な人物像を思い浮かべます。
『グリーン・インフェルノ』(13)のような”人を喰べる”ことが当たり前の種族たち、『羊たちの沈黙』(90)で有名なハンニバル・レクターのように、神を信じておらず”人を喰べる”ことに対して罪悪感を持たない嗜虐的な人物。
様々な形で”人喰い”は描かれてきましたが、精通しているのは「人を殺すことに対して逡巡しない」ということでした。
だからこそ、”人喰い”が主人公で心優しい人物ということに新鮮さを感じました。
彼女たちは、ただ人間の三大欲求「食欲、睡眠欲、性欲」と同じように”人間を喰べたい”という欲を持ってしまったのです。
社会的には絶対にダメな欲求を抱えるという”宿命”を背負い、異端者として生きる道を探していきます。
考え方によっては、”人喰い”はただのメタファーであり、世の中から疎外感を抱いている人たちをマレンやリーと重ねることができます。
原作と映画の魅力を読み解く
原作者はカミーユ・デアンジェリスが2015年に発表した若者たちに向けて書かれた文学です。
興味深いと思ったのは、原作者は長年ベジタリアンで、現在はヴィーガン(卵や乳製品もとらない菜食主義)ということ。
読み解くと、人が肉を食べるという道徳問題についても問いかけているように考えられます。
原作と映画を比較すると違うところも多くあり、良い意味でルカ・グァダニーノの色に染まっています。
特にジェンダーの曖昧さは監督らしさを感じ、マレンやリーの着ている洋服はどこか中性的で、男性や女性というのを意識させません。
ネタバレになるので深く話せませんが、親子の愛情の魅せ方も監督ならではの演出があり、本作に惹かれた人は原作を読むのもお薦めします。
《原作者紹介》(管理人編)
●カミーユ・デアンジェリス(Camille DeAngelis)
誕生日:1980年11月14日生まれ
出身:アメリカ
原作タイトル:『BONES AND ALL』
まとめ:カテゴリーの先入観にとらわれずに
ルカ・グァダニーノ監督は、筆者が愛する監督の一人です。
今回監督作品の中で初めて原作を読んで比較したのですが、原作を忠実に淡々と描くわけでなく、彼の伝えたいメッセージや美学を含めたエッセンスを取り入れていて、改めて素晴らしい監督だと再認識しました。
古典的なイタリア映画の遺伝子を感じる、まるで絵画のような色彩の映像に優雅で不穏な空気を漂わせる音楽を融合させ、一つの芸術作品のような映画を生み出しました。
観たい作品が常に絶えないので、観返すことは本当に好きな作品しかしないのですが、本作はしっかり二度鑑賞。
二度目のほうが、孤独さや、愛を必死に求める姿を噛み締めることができました。
”ホラー”や”ラブストーリー”というカテゴリーを決めず、”人喰い”に対しての先入観を捨てて、是非多くの方に観て欲しいです。
関連記事:ティモシー・シャラメの新境地『Bones And All』、人喰い少女と放浪青年の衝撃新作予告編!
《ライター紹介:anzu》
大学生時代にフランス文学を専攻していたこともあり、ヨーロッパ映画に惹かれる傾向にあります。
映像や台詞、音楽のときめき、ホラーやサスペンスのような怖さの驚き等、ドキドキする作品がたまらなく好きです。
今まで観てきた映画の数は1400本を越え、今も更新中です。
Twitter(映画垢):
https://twitter.com/paloalto1989
instagram(プライベート垢):
https://www.instagram.com/paloalto1989/
Filmarks:
https://filmarks.com/users/Spidey1926
記事へのご感想・関連情報・続報コメントお待ちしています!