フロリダ半島の先、アメリカの「喉元」キューバ
『クーリエ 最高機密の運び屋』は、1962年10月に勃発した「キューバ危機」を描いた映画です。
キューバはご存じのように、アメリカ・フロリダ半島のすぐ南、カリブ海にある共産主義の国。
「キューバ危機」とは、この国に同じ共産圏の旧ソ連が核ミサイル基地を建設したことから始まりました。
地図を見れば一目瞭然ですが、アメリカはいわば喉元に拳銃を突きつけられた格好になったのです。
アメリカはこれに激しく抵抗、米ソは一触即発の状態にまで進んだのです。
危機回避の後ろで、関わった名もない人たち
「キューバ危機」を簡単に説明したYoutube動画がありますので、まずはご覧ください。
最終的に当時のアメリカ・ケネディ大統領と、ソ連・フルシチョフ第一書記の間で交わされた書簡により、「危機」が「危機」のまま終わったことを伝えています。
しかし、危機回避にいたるまで約半月間、両首脳の決断に資する「情報=事実」を必死に集めた多くの人間がいて、大いなる「決着」となったのは言うまでもありません。
【YouTube:【キューバ危機】映像と解説 / 最も核戦争が近付いた瞬間 – ケネディ大統領テレビ演説】
さて、今記事で紹介する映画『クーリエ 最高機密の運び屋』は、そんな歴史の中に隠されてきた人物が登場します。
ひとりは、アメリカCIAとイギリスMI6から「特命」を受けたグレヴィル・ウィン( ベネディクト・カンバーバッチ)。
もうひとりは、ソ連側の内通者オレグ・ペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)です。
東欧を往来し、工業製品を降ろすセールスマン
もちろん、どちらも実在人物で実名で登場します。
手っ取り早くいえば、国家のためひいては世界のためにあえて諜報活動に身をやつした二人のスパイ活動が緊張感たっぷりに描かれています。
「ウィン」の肩書は、セールスマン。
東欧を頻繁に往来し、工業製品を卸していたイギリス人でした。
そんな人間に白羽の矢を立てたのがアメリカCIA。
ロンドンのイギリス情報局MI6を通じ、ウィンに依頼されたのは「クーリエ」(運び屋)の仕事だったです。
●ベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)
誕生日:1976年7月19日(かに座)
身長 183cm
出身:イギリス・ロンドン
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ソ連高官への接触を依頼、「クーリエ」の目的は?
CIAの担当者エミリー・ドノヴァン(レイチェル・ブロズナハン)いわく、ソ連の高官と接触し「運んでほしい」ものがあると。
その高官こそ、GRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の高官オレグ・ペンコフスキー大佐だったのです。
後になってわかるのが、ペンコフスキーはソ連内部にあって政府のやり方に「危機」を感じており、アメリカとのコンタクトを切望していたのです。
危機とは、まさにソ連の対アメリカ政策そしてキューバへの急接近と、キューバでやろうとしていることでした。
「核戦争の回避」という大義のためとはいえ、立場上、命を懸けての内通だったのは言うまでもありません。
●レイチェル・ブロズナハン(Rachel Brosnahan)
誕生日:1990年7月12日 (かに座)
身長:161cm
出身:アメリカ・ウィスコンシン州
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交渉決裂に突き進む中、米ソが「軍事行動」シフト
CIA担当官エミリーに説得されるウィンも耳にする「危機回避」という言葉。
言葉はきれいだが、ウィンもペンコフスキー同様、命がけの仕事になることは容易に想像できます。
しかも、普通の家庭人であるウィンは場合によっては家族に影響が出ることを懸念。
そんな中、キューバの核施設建設をめぐる米ソの交渉は決裂への道を歩むのでした。
実際に危機と言われた期間は13日間。
この間、アメリカは「軍事行動」か「海上封鎖」かの二択へと進みます。
軍事行動とは、両国が艦隊や兵力をすべて交戦が始まった時を想定し軍隊を貼り付けること。
まさに一触即発の状態になったのでした。
最終的にウィンを動かしたのは何か、状況を察したウィンは「仕事」を引き受ける決心します。
「この国では、すべてがKGB(ソ連国家保安委員会)の人間と思え!」と言われる、そんな国への渡航です。
現地での接触方法、秘密裏の情報収集など二人の鬼気迫る行動を想像するとシビレます。
危機回避の影で、「スパイ」のたどった運命は?
戦争が起こってしまえば、自陣を勝利に導いた人間や戦争を終結させた人間が英雄視されがちです。
たとえ、多くの犠牲者を出していたとしても。
しかし、戦争を起こさせないために暗躍し好ましい結果につながった人間がいたとしたら、そちらの方がはるかに英雄と呼べるにふさわしいのではないでしょうか。
となれば気になるのが、大儀のために闇に紛れて「スパイ活動」をした二人のその後。
どんな運命が待っていたのか、映画の中のエンドロールでご確認下さい。
■「キューバ危機」と現代の中南米の国々(参考本)
※1962年10月16日。ケネディ大統領のもとに、とんでもないニュースがもたらされた。カストロ政権下キューバの領土内に、ソ連軍によるミサイル発射基地が建設中、アメリカ本土を射程とした核ミサイルが配備されているというのだ!息詰まるような緊張のなか、事態は二転三転し、思いもよらない危険な事件が次々と起きてしまう…。(中略)冷戦終結後20年をへて、新たに発見された原資料や米ソ両国の当事者へのインタビューをもとに、気鋭のジャーナリストが描きだすノンストップ・ドキュメンタリー。【引用:Amazon】
※「そこでアメリカは何をしてきたのか」
「地峡で有名なパナマは、アメリカが運河を支配するために独立させた国だった」
「キューバにある米軍グアンタナモ基地は、キューバ独立時の取り決めにより、アメリカは永久に借りられる」
「キューバと関係を深めるグレナダを、アメリカは自国民保護を理由に侵攻。親米政権を樹立した」
など、中南米諸国とアメリカとの知られざる関係を詳しく解説。【引用:Amazon】
まとめ~あれから半世紀~
近隣に政情不安定な国があると、隣国は落ち着かないものです。
まして、その国が共産党による独裁国家とあればなおさら。
最近もBBC(イギリス国営放送)は、キューバについて「民衆は、経済的危機や食料品・医薬品の不足、そしてCOVID-19への対応に憤っている」と伝えています。
(BBCニュース・キューバ反政府デモ:https://www.bbc.com/japanese/57831002)
アメリカがキューバ情勢に神経をとがらせているのは言うまでもありません。
そんなニュースに触れながら今作を見ると深いものがあるかもしれません。
●政変の中でゆさぶられるスパイ…
●遠い過去の記憶を手繰り寄せると…
●闇に葬られた旧ソ連の二重スパイ
●KGBとCIAに翻弄される顛末は…
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