1930年代のフランスを舞台とした話題のコメディサスペンス『私がやりました』。
一風変わったストーリーと、女優たちが着こなすレトロなファッションが話題の本作。
実はただのコメディに留まらず、現代的なテーマに深く切り込んだ風刺作でもあります。
普段はあまりフランス映画に馴染みがないという人にもお勧めしたい作品です。
今回は、映画『私がやりました』の奥深いテーマを考察しつつ、注目の主演女優たちの魅力にも迫ります!
(冒頭画像:引用https://twitter.com/francois_ozon/header_photo)
あらすじ:魅惑の「犯人の座」をかけた女の戦い!?
1935年、パリ。
著名な映画プロデューサー・モンフェラン氏が何者かによって撃ち殺される事件が発生。
時を同じくして、売れない女優・マドレーヌが新人弁護士のポーリーヌのもとに駆け込んでいました。
モンフェラン氏が殺害されたその日、マドレーヌは彼の邸宅に呼ばれて愛人になるよう迫られていたのです。
殺人の嫌疑をかけられ、すぐさまポーリーヌを弁護士に指名したマドレーヌ。
法廷へ向かう2人の女の腹の中には、ある企みがあって……。
ポーリーヌは裁判での筋書きを考えて台本を用意。
マドレーヌは鮮やかな演技力で「悲劇のヒロイン」になりきり、無罪を勝ち取るどころか一躍大スターへと駆け上がります。
ところがそんな2人の前に、モンフェラン殺しの真犯人を名乗る女・オデットが登場。
魅惑の「犯人の座」をかけて、女たちは壮絶な駆け引きを繰り広げることに……!
レトロと新感覚、マッチングが楽しいサスペンスコメディ
犯人の座をかけて女たちが悪だくみを重ねるという、一風変わったストーリーの本作。
舞台が1930年代ということもあり、パッと目を引くのはキャラクターたちのシックでエレガントな装いとレトロなパリの街並みです。
画面を彩るファッションや小物を見ているだけで心躍り、さらにテンポ良く進むコメディならではの展開にも引き込まれます。
しかし本作の裏にある本当のテーマは、「女性の尊厳の闘い」と徹底的な社会風刺。
レトロな舞台設定と映像の中に、ユニークなストーリーと現代的な風刺を織り交ぜているのです。
本作は過去にさまざまなジャンルの作品を手掛けてきたフランソワ・オゾン監督の真骨頂と言えるでしょう。
奇抜なストーリー、裏に隠された社会風刺
ストーリーのベースとなっているのは、ハリウッドの大物プロデューサーだった※ハーヴェイ・ワインスタインによる性被害事件だと言われています。
一方で本作の舞台は1930年代のフランス。
女性の参政権すらも認められていなかった時代です。
マドレーヌとポーリーヌは性被害を告発し、女性の権利が弱いことを逆手にとって闘い、多くの女性に勇気を与えていきます。
舞台を現代としなかったのには、「昔も今も性差による問題は解決していない」という風刺が込められているのかもれません。
イザベル・ユペール演じる落ぶれた女優・オデットも象徴的な存在です。
サンドラ・ブロック主演の映画『ザ・ロストシティ』でも風刺されたように、女優はある年齢を過ぎると演じられる役の幅がグッと狭くなることが問題視されてきました。
オデットはかつて大女優でしたが、今や「犯人の座」を奪ってでも注目を浴びたいと渇望する落ち目の女として描かれています。
本作のテーマには若い女性の地位向上だけでなく、女性に向けられる世間の目や皮肉に対する警鐘も含まれているのではないでしょうか?
※ハーヴェイ・ワインスタイン参考作品:動画配信・レンタル・本【管理人・選】
※ニューヨーク・タイムズに衝撃のスクープが掲載され、のちに”性犯罪告発運動”#MeToo運動を爆発させたハーヴェイ・ワインスタイン事件──。取材を進める中で、ワインスタインは過去に何度も記事をもみ消してきたことが判明…。【引用:Amazon】
※ハリウッド大御所プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性的虐待疑惑を追いかける著者ローナン・ファロー。勇気ある女性たちの証言を得た調査の先に浮かび上がってきたのは、メディア界・政界・司法界による“悪の三位一体”構造だった…。【引用:Amazon】
フランスの名匠に選ばれた、2人の主演女優
オゾン監督は、『8人の女たち』や『しあわせの雨傘』といった大ヒット作を生み出してきました。
フランス人俳優であれば誰しも一度は彼の作品に出演したいと願うような、まさに「名匠」。
そんな彼が今回主役のマドレーヌとポーリーヌ役に抜擢したのは、将来有望で美しい若手女優2人でした。
フランスの名優たちに愛された名匠の目に留まった主演女優2人をご紹介!
ナディア・テレスキウィッツ:デビュー当時から注目度MAXの新星
自由奔放で無邪気な女優・マドレーヌを演じたのは、ナディア・テレスキウィッツ。
1996年生まれの彼女は、2019年公開の『悪なき殺人』で長編デビューしたばかりの「新星」。
それでいて、すでに将来有望な女優として注目度MAXの存在です。
ナディアは『悪なき殺人』で東京国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。
さらに2022年には『Les Amandiers(原題)』に出演し、フランス版アカデミー賞と呼ばれるセザール賞で有望若手女優賞受賞に輝きました。
1930年代に生きた女優という役どころを演じるにあたり、ハリウッドの古典映画を参考に役作りに挑んだというナディア。
コメディならではのリズム感も大事にしながらマドレーヌを演じ切りました。
さらに本作ではフランスの大女優イザベルとの共演が叶い、彼女の好奇心の豊かさや人間性に感銘を受けたそう。
世界に飛び立つようなキャリアを目指したいとの決意をあらたにしたようで、今後の活躍から目が離せません。
●ナディア・テレスキウィッツ(Nadia Tereszkiewicz)
誕生日:1996年5月24日生まれ
星座:ふたご座
出身:フランス
▶おすすめの代表作品
レベッカ・マルデール:劇団仕込みの演技力を名匠も大絶賛
駆け出しの弁護士・ポーリーヌ役を演じたのは、レベッカ・マルデール。
彼女はフランスを代表する王立劇団※「コメディ・フランセーズ」出身の女優。
由緒正しき劇団で培った抜群の演技力を持っています。
本作のセリフまわしは演劇的なところも多く、レベッカの才能が大いに発揮されたようです。
オゾン監督はオーディションの際に、文学長のセリフを滑らかに発音できる女優を探しており、レベッカに白羽の矢が立ったというわけ。
名匠が認めた才能の持ち主だったということです。
舞台を中心に活躍してきたレベッカにとっては、映画進出の良いきっかけともなりました。
共演者のナディアともオーディションの時から打ち解け、劇中さながらの共犯者のような絆ができたそうですよ。
今後本格的に映画への出演を増やしていくのか、気になるところです。
●レベッカ・マルデール(Anamaria Vartolomei)
誕生日:1995年4月10日生まれ
星座:おひつじ座
出身:フランス
▶おすすめの代表作品
まとめ:1930年代のフレンチ・スタイルも!
女たちが「犯人の座」をめぐって争う、一風変わったサスペンスコメディ『私がやりました』。
社会風刺たっぷりの本作ですが、純粋におしゃれなフランス映画としても楽しめます。
1930年代のフレンチ・スタイルをもとに、キャラクターの魅力を引き出すデザインで作り出されたファッション。
そしてレトロな雰囲気が漂うパリの街並みは、パリだけでなくボルドーやベルギーでも撮影が敢行されたそう。
フランス映画界の名匠フランソワ・オゾンが生み出した傑作を心ゆくまで堪能してください。
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ウェス・アンダーソン作品の世界観が大好き!ライターの「もな」です。
映画にどハマりしたのは、小学生の頃に『ロード・オブ・ザ・リング』を観てから。
それからというもの、映画は私の人生にとって欠かせないもので、大学では映画学を専攻しました。
私の書く記事が、誰かと素敵な映画との出会いの場になったら嬉しいです。
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