「ハムレット」「リア王」「オセロ」に並ぶシェイクスピア四代悲劇、「マクベス」。
今回紹介するのは、2021年公開の映画『マクベス』です。
シェイクスピアが生み出す言葉に酔いしれて、喜劇も含めて映画化されている作品は色々と鑑賞してきました。
元々2015年の同作品も観ており、物語に目新しさなども期待していなかったのですが…想像を絶する美しい陰影と演出手法に目が釘つけ。
第94回アカデミー賞では、主演男優賞でデンゼル・ワシントンのノミネートを含めて3部門のノミネートを果たした本作。
是非一人でも多くの方の目に触れてほしい作品なので、製作・配信に携わった2社「Apple×A24」の紹介ととも今作の見どころを解説をさせていただきます。
これから目が離せない、Apple Original Films
まず紹介したいのが、本作の製作・配給・配信を担当したエンターテイメント会社2社です。
A24は、『ミッドサマー』(19)や、『mid90sミッドナインティーズ』(18)など次々に話題作を生んでいる製作配給会社です。
どの作品もシャレた映像や、クオリティの高い音楽でエッジの効いた強烈な印象を残してくれます。
そして、動画配信したのがApple TV+(アップルTVプラス)で、最近の動きには目を見張るものがあります。
まだ作品数は少ない印象ですが、第94回アカデミー賞で6部門ノミネートを果たし、作品賞でも見事に受賞した『コーダ あいのうた』(21)では、Apple TV+初となる快挙で世間を賑わせました。
今まで動画配信系で作品賞を受賞した作品はなかったので、アカデミー賞も時代の流れに沿って変化しているのだと考えさせられました。
個人的なおすすめは、豊かな演出で魅せたアニメーション『ウルフウォーカー』(20)。
また、ちょっとレトロな可愛い衣装と舞台、そして音楽で魅せてくれたミュージカルドラマ『シュミガドーン』を観ても、とにかくクオリティが高い作品を生み出しているというイメージです。
ちなみに、Apple Original Films(AppleTV+のオリジナルプログラミングリスト)と、A24の初タッグ作品、ソフィア・コッポラの『オン・ザ・ロック』(20)なども非常に良かったです。
これからのApple Original Filmsの新作には目が離せません。
映画『マクベス』(21)あらすじ
スコットランドの武将であるマクベスとバンクォーは、荒野で3人の魔女に出会います。
魔女達はマクベスに対し「万歳、いずれ王になるお方」と呼びかけ、バンクォーには「王にはなれないが、子孫が王になる」と予言し姿を消しました。
その後、予言が当たったようにマクベスの昇進が決定し、彼は野心に狩られ次は国王になりたいと強く望むようになります。
彼が魔女のことをマクベス夫人に話すと、彼女は夫の背中を押し、王の暗殺を計画します。
望みどおり王になった彼でしたが、自分の地位を失う恐怖から次々と罪を重ねていくことになるのです…
見どころ:アカデミー賞常連の最強タッグが実現
本作の見どころは、過去にアカデミー賞で何度もノミネートや受賞を果たしている実力派の二人が夫婦を演じていることです。
主人公マクベスを演じたデンゼル・ワシントンは、過去に主演男優賞と助演男優賞受賞経歴もある実力俳優。
映画辛口批評サイトRottenTomatoesでも、デンゼル・ワシントンの演技は絶賛されています。
シンプルな演出な上に、彼の深みのある演技力が際立つようでした。
●デンゼル・ワシントン(Denzel Washington)
誕生日:1954年12月28日 生まれ
星座:いて座
身長:185cm
出身:アメリカ・ニューヨーク州
▶おすすめの代表作品
そして、欲に溺れていく悪女マクベス夫人を演じたのは、フランシス・マクドーマンド。
『ファーゴ』(96)、『スリー・ビルボード』(17)、及び『ノマドランド』(21)でもアカデミー主演女優賞を獲得しています。
正直、私はデンゼル・ワシントンよりも彼女の狂気に満ちた演技に引き込まれました。
劇中の、
「さあ、殺意に仕える悪霊たちよ。私を女でなくしておくれ。頭から爪先まで残忍さで満たしてちょうだい」
という台詞には、マクベス夫人の悪女に変わろうとする覚悟を感じ、観ているこちらまで不安を掻き立てられました。
ラストに近づくに連れて人間の残忍さだけでなく、弱さや脆さも垣間見えていきます。
彼らの演技には必ず驚かされるはずです。
●フランシス・マクドーマンド(Frances McDormand)
誕生日:1957年6月23日生まれ
星座:かに座
出身:アメリカ・イリノイ州
身長:165㎝
▶おすすめの代表作品
※飄々として、時にはにかむ優し気な顔。現実の厳しさを垣間見せながら淡々と進む素晴らしい映画、そして女優です。なんと3度目の主演女優賞。
※いかつくも頑固な役を好演。主演フランシス・マクドーマンドが2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞した名作です。
監督&脚本:”芸術家”ジョエル・コーエンによる作品
本作の監督・脚本は”コーエン兄弟”として世界に名を馳せている監督の一人、ジョエル・コーエン。
コーエン兄弟といえば、アカデミー賞で脚本賞を受賞した傑作『ファーゴ』や作品賞を受賞した『ノーカントリー』(07)といった代表作を持ちます。
つまり、役者に続いて監督まで優秀な芸術家たちによって創り出された作品ということです。
映画好きファンの多い監督、背景に役者との信頼関係
コーエン兄弟監督の作品は、超現実主義かつ不条理を訴えかけてくるような映画を生み出している印象を持ち、映画好きにファンが多いのも納得です。
特に『ノーカントリー』では、今までにないシュールな展開で進んでいき、常識を覆された記憶があります。
余談ですが、私生活では、先ほどご紹介したフランシス・マクドーマンドと結婚しています。
監督と役者が信頼関係で結ばれているからこそ、良い作品が生み出されたのかもしれません。
映像&演出の美しさ:格別のモノクロ映像
アカデミー賞でノミネートされたのは、主演男優賞、撮影賞、美術賞の3部門。
個人的には、美術賞は本作に与えて欲しかったと思うくらい素晴らしかったぐらい!
(『DUNE /砂の惑星』(22)も壮大なスケールで凄かったですが…!)
安藤忠雄の建築を彷彿とさせる無機質なデザインに、全編モノクロだからこそ叶う美しい陰影。
最近、ケネス・ブラナーの『ベルファスト』(21)や、前回紹介の『カモン カモン』(21)など、現代に敢えてモノクロ映像を使用する作品をよく観ますが、本作の映像は別格です。
例に挙げた2作は、モノクロにすることで優しさや温かさを演出していましたが、『マクベス』は完璧な芸術と言い切れるでしょう。
参考記事:A24×マイク・ミルズ監督が再タッグ『カモン カモン』、主演ホアキン・フェニックスの家族愛
参考記事:『ベルファスト』の歴史背景とあらすじ。北アイルランド出身ブラナー監督の望郷の思いが…
そして舞台セットも壮観かつシンプルで心を奪われます。
2015年の『マクベス』のような重厚感ある作品と比べて、かなりモダン的。
私はシェイクスピアを始め、歴史ある文学の映画化作品を数々観てきました。
しかし、こんなに現代的なのに古典的な崇高さを削ぐわない作品には、初めて出会ったと断言できるくらい感銘を受けました。
また演出がかなり新しいく、特に3人の魔女が出てくる際の”水”を使った演出が好きでした。
キャスリン・ハンターという女優が3人の魔女をたった一人で演じているのですが、1人でも3人の役者に全く引けを取らない存在感。
是非実際に観ていただきたい女優です。
まとめ
本作のモノクロ映像と舞台演出は、今までの映画とは一線を画すものがあります。
シェイクスピアの戯曲をまるっと台詞に落とし込み、韻を踏む心地いい音と台詞に酔いしれます。
今まで古典的な作品は煌びやかな重厚感あるものに限ると思っていたのですが、こういった新しい演出手法もあるのだと気付かされました。
数年に一度しか出会えないくらい上質な作品でしたので、気になった方がいたら是非鑑賞してみてください。
そして観るときは、映画館での再上映を待つか、部屋を真っ暗にし静寂を大切にして堪能することをぜひおすすめします。
《ライター紹介:anzu》 クリックで担当記事一覧へ→
大学生時代にフランス文学を専攻していたこともあり、ヨーロッパ映画に惹かれる傾向にあります。
映像や台詞、音楽のときめき、ホラーやサスペンスのような怖さの驚き等、ドキドキする作品がたまらなく好きです。
今まで観てきた映画の数は1400本を越え、今も更新中です。
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