監督業から引退宣言!グザヴィエ・ドラン監督、デビュー作から最高傑作まで若き俊英作品3選

グザヴィエ・ドラン
特集「グザヴィエ・ドラン監督」

2023年7月、突如、映画監督業から引退することを発表し、ファンを驚かせたグザヴィエ・ドラン

類稀なセンスと才能を発揮し、カンヌなどでも認められてきただけに、ショックを受けた人も多いのではないでしょうか。

かくいう私も、ドラン作品が大好きすぎてモントリオールに住んでしまったほどなので、この決断は少し悲しいものでした。

ドラン作品は常に自身のセクシュアリティやアイデンティティを反映させてあり、世代が同じファンとしては「これ分かる!」と思えるシーンが結構あります。

今回は、私の独断とかなりの偏見で、オススメのドラン作品をご紹介します!

(冒頭画像:引用https://japan.unifrance.org/)

『マイ・マザー』:ドランの描く、ティーンの姿に共感

マイ・マザー
監督・主演:グザヴィエ・ドラン https://www.facebook.com/I.killed.my.Mother/

2009年に公開されたグザヴィエ・ドランの初監督作品です。

ティーンエイジャーが母親との関係に葛藤する姿を描き、カンヌをはじめとする主要な映画祭で注目を浴びました。

この作品では、ドランは監督と主演を務めています。

ストーリー

17歳の青年ユベール(グザヴィエ・ドラン)は、母親と2人暮らし。

母親は小言が多く、センスのない洋服を着ていて、さらにはインテリアの趣味も悪い。

そのひとつひとつがユベールにとっては気に障ります。

大好きだったはずの母親に対し、イライラする毎日。

ところがそんなある日、セイント・ローレンス川の土手でたたずむ母親を見かけたユベールは、昔の楽しかったころを思い出すのです…。

オススメポイント

誰もが経験したことがあるかもしれない、思春期特有の両親との関係、それを『マイ・マザー』は母親にフォーカスして絶妙に描いています。

原題は、『J’ai tué ma mère (I killed my mother)』

訳すと「僕は母親を殺した」となります。

母親に強く当たってしまうことで、母親の心を殺してしまったのではないか、そういったユベールの葛藤がタイトルとなっているのではないでしょうか。

私は初めてこの作品を見た時、ドランの描くティーンの姿にものすごく共感を覚えました。

母親に対する態度や言動は、ユベールほどではないものの、私にも当てはまることが多かったです。

きっと、『マイ・マザー』はどこかのシーンで必ず共感するポイントがあるはずです。

『わたしはロランス』:ドランマジック、恐るべし!

わたしはロランス
https://www.uplink.co.jp/laurence/gallery.php

ドランが日本でも一気に有名となった作品といっても過言ではありません。

ドラン作品の軸となる、セクシュアリティ。

『わたしはロランス』ではトランスジェンダーの男性教師を描き、大絶賛を浴びました。

2012年のトロント国際映画祭では、カナディアン作品賞を受賞。

ドランは23歳ながら国際的に名の知れた監督となりました。

ストーリー

モントリオールで文学の先生をしている35歳のロランス

ロランスには恋人のフレッドがおり、2人は普通のカップルに見えるのですが、実はロランスには大きな秘密がありました。

ある日、その秘密をフレッドに打ち明けることにしたロランス。

それは、実はロランスは性同一性障害であり、女として人生をやり直したいというものでした。

動揺したフレッドですが、ロランスの望みに力を貸す決意をし、メイクやファッションなどのアドバイスもすることに。

ですが、女として職場に現れたロランスに対する周囲の態度や視線はとても冷たいものでした…。

オススメポイント

ストーリーもさることながら、ドラン作品らしい映像美が楽しめるのも『わたしはロランス』のおすすめポイントです。

映像は色彩が豊かなうえ、スローモーションも多用しています。

さらに、正方形の画面はどこかノスタルジックな雰囲気で、色彩も相まってアーティスティック。

私は実は、元々フランス語の映画が苦手だったのですが、『わたしはロランス』はなぜかしっくりハマって最後まで見ることができました。

ドランマジック、恐るべしですね。

『Mommy/マミー』:群を抜く、キャリア以上の傑作!

グザヴィエ・ドラン
https://kyoto.uplink.co.jp/movie/

『わたしはロランス』で監督としての人気も博したグザヴィエ・ドラン

日本では新作が出るたびに映画ファンの中で話題になりました。

この『Mommy/マミー』ももちろん、ドランファンには待望の新作で、当時は私を含め首を長くしてまっていた人たちばかり。

そんな高い期待を裏切らないドランは、『Mommy/マミー』でも手腕を存分に発揮し、キャリア史上の傑作と言われたほどです。

ストーリー

46歳のディアンは未亡人のシングルマザー。

ADHDを持つ17歳の息子・スティーブは入所していた施設で問題行動を起こし退所させられます。

ディアンはスティーブと再び暮らし始めることを選ぶのですが、問題行動ばかり起こす息子に頭を悩ませるのです。

そんな時、引越し先の近所に住むカイラという女性に出会った2人。

高校教師で現在は休職中のカイラはスティーブの家庭教師となり、3人の絆は次第に強くなっていくのでした…。

オススメポイント

興行収入は3.4ミリオンドルを越え、ドラン作品でも最も成功したといっても過言ではないのが『Mommy/マミー』です。

サウンドトラックも良く、さらに1:1の画面で撮られている映像も意味があるもので、1秒たりとも目が離せません。

デビュー作から母と息子、そしてセクシュアリティをテーマに作品を撮り続けてきたドランですが、『Mommy/マミー』はドラン作品の中でも群を抜いて素晴らしいです。

定期的に見直したくなる、そんな作品だと思います。

まとめ:今後の俳優業に期待!

グザヴィエ・ドラン
https://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/

いかがでしたでしょうか?

2023年は初のテレビドラマ製作など、監督業としてもまだまだ頑張っている印象だったグザヴィエ・ドラン

新作映画を楽しみにしているファンもいたはずですが、残念ながら映画製作からは引退すると公式発表しました。

若い頃から自身のポケットマネーも駆使し、撮りたいものを撮ってきたドランですが、思うような興業収入が得られない映画製作に時間を費やすことに疲れてしまったようです。

今後は俳優業のほうに力を入れていくとのことで、こちらの方もまた才能があるドラン、スクリーンで見れることが多くなりそうですね。

▶関連本(管理人・選)

ユリイカ :グザヴィエ・ドラン 特集

グザヴィエ・ドランは愛することの色合いを、独自の映画的リアリズムと創造性に沿ってつねにビビッドに映し出してきた。『マイ・マザー』(2009年)や『わたしはロランス』(2012年)、『Mommy/マミー』(2014年)から、『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』に至るまで、グザヴィエ・ドランのキャリアを追い、その魅力に迫る特集号。若き俊英のすべて【引用:Amazon】

参考記事:使用楽曲も胸に響く、グザヴィエ・ドラン監督作品『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』

《ライター:Ayaka》 担当記事一覧はこちらをクリック→

プロフィールayaka
🏵️ayaka(於・アトランタ)

高校時代にハマった映画観賞が、いつのまにかライフワークに。

ハリウッド大作からインディペンデント作品まで、ジャンルを問わず見ています。

オタク気質ゆえ、気になる作品はとことん調べてしまいます(笑)

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