『インセプション』『ダークナイト』などを世に送り出してきた、クリストファー・ノーラン監督。
迫力のある映像や緻密なストーリーで、映画ファンの間でもお気に入りの監督としてよく名前が挙がります。
今回の記事では、ノーラン監督作品を観たことがないけど気になっている、観たけど難しかった!という人に向けて、比較的初心者向けの3本の作品の魅力とその「構造」について解説していきます!
(冒頭画像:引用https://twitter.com/dunkirkmovie/)
※(管理人コメント)最後には、関連記事として2024年3月公開の『オッペンハイマー』の関連情報を張り付けていますのでぜひ、ご覧ください。
ノーラン映画は、「構造」に注目するのがおすすめ!
クリストファー・ノーラン監督の作品についてよく言われるのは、「ストーリーや設定が難解である」ということ。
迫力たっぷりの映像を観ていても「一体今何が起こってるの!?」と混乱してしまうのは、よくあることです。
そんなノーラン映画を少しでも楽しむためのポイントは、その作品のルールや構造に注目すること。
例えば、『メメント』は「10分ごとに記憶がなくなっていく男の話」ですが、これだけではどんな映画かほとんどわかりません。
代わりに、「10分ごとに、映画の時間が過去へと戻っていく」と言い換えてみると、少しはわかりやすくなるのではないでしょうか。
こうした映画内のルールを掴むことができたら、ノーラン映画はぐっと観やすくなると思います。
今回は、ノーラン映画の中でも比較的わかりやすい構造を持っている『メメント』(00)『インセプション』(10)『ダンケルク』(17)を例に解説していきます!
1.『メメント』:10分ごとに10分前の「原因」へ戻る!
主人公のレナード(ガイ・ピアース)は、妻を何者かに殺されたショックで前向性健忘を患った男。
前向性健忘とは、ごく最近の記憶がなくなってしまう病気のことで、レナードの場合は10分以上の記憶を保つことができません。
レナードは対策としてメモ書きや写真やタトゥーを残し、それを頼りに妻を殺した犯人を探そうとしますが……。
ポイント:通常の映画とは「逆」に進んでいく構造に注目!
本作のポイントは、劇中で10分経つごとに10分前に起こったことの原因が明らかになっていくということ。
場面が切り替わるたびに映画は少しずつ過去へ戻っていき、最後はレナードの妻の死の真相が明らかになります。
文字だけで見るとピンと来ないところもありますが、次の2点を押さえているだけでもかなり違ってくると思います。
①唐突に思える各シーンの始まりが「なぜそうなったのか」が10分ごとに分かる仕組み
②モノクロの場面はカラーよりもさらに過去の場面
最初は混乱するかもしれませんが、①を何度も繰り返して映画が進むので、観ているうちにこちらもある程度慣れてくるのが面白いところです。
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上級者向け?『テネット』は、さらに複雑さを楽しみたい人に!
2020年、コロナ禍の中で公開されたノーラン監督の『TENET テネット』は、時間の逆行を駆使して未来からやってきた敵と戦うという設定です。
出世作の『メメント』への原点回帰とも言える作品ですが、逆再生の映像や台詞が頻出するその複雑さは最高難度と言ってもいいほど。
ノーラン監督作品の複雑さや重量感に魅力を感じた人にはおすすめです!
■「TENET テネット」作品情報と参考本【管理人・選】
※【ノーランの哲学と科学】●山崎詩郎「物理学で楽しむ『TENET テネット』の時間」【引用:Amazon】
2.『インセプション』:並行する夢、深いほど時間は膨大
主人公のコブ(レオナルド・ディカプリオ)は、他人の夢の中に入り込んで、潜在意識にあるアイデアを盗む企業スパイ。
依頼人のサイトー(渡辺謙)からの仕事を受けて、ある大企業の御曹司に「会社を解体させる」というアイデアの植え付けに挑戦します。
ポイント:1週間、6ヶ月、10年間、それ以上
サイトーからの依頼を実行する作戦では、以下の2つがポイント。
①「夢の中で夢を見る」という重箱構造が4層(雨のLA/ホテル/雪山/海辺)に渡っている
②夢が深くなればなるほど時間が経つのが早くなる
つまり、現実の時間で10時間寝て実行する作戦では、最初の夢では1週間、その中の夢では6ヶ月……と、どんどん夢の中で過ごす(体感)時間が長くなっていくということです。
映画の後半では、この4層が見事な編集によって同時に映し出されるのも見どころです!
■『インセプション』作品情報と参考本【管理人・選】
※特殊効果と視覚効果を巧みに使いこなして映像化した意識構造の迷路。・実態間のあるリアリズム・現場での特殊効果を多用した撮影・パリでのロケーション撮影・年老いたサイトーのメイクアップ【引用:Amazon】
3.『ダンケルク』:長さが違う、3つの物語が交差する!
第二次世界大戦初期、連合軍はフランス北部の海岸ダンケルクまで独軍に追い詰められます。
陸に取り残された若い兵士たちと、徴用によって救助作戦に参加した観光船の親子と少年、そして英空軍スピットファイアのパイロットの運命が交差していく様子が映し出されます。
ポイント:陸の1週間、海の1日、空の1時間
本作の構造は、『インセプション』にとても似ていると言っていいでしょう。
『ダンケルク』では、以下の三つの時間が同時に描かれます。
①ダンケルクに取り残された兵士たちが救出されるまでの1週間
②観光船を所有する親子と少年が海を渡って救助に向かう1日
③ダンケルクからの撤退を邪魔しようとする独軍と戦う空軍兵の1時間
歩兵たちの最後の1日は観光船での1日と、彼らの最後の1時間は空軍兵の1時間と重なっていくことになります。
『メメント』や『インセプション』とは違い、『ダンケルク』はこうした構造がストーリーそのものとは関係がないので、そういった意味では観やすい映画とも言えます。
まとめ:ノーラン作品で、「時間」を体験!
クリストファー・ノーラン監督は、多くの作品で「時間」について扱ってきました。
文字だけの説明では不十分なところがあるかもしれませんが、記事を読んだ上で実際に作品を観てみると、映像の力でかなりの部分が理解しやすいように作られているということが分かるでしょう。
ノーラン監督の作品では、時間と空間を切り貼りすることのできる、映画の編集でしか可能にならない「時間」を観ることができます。
お気に入りの一本が見つかったら、ぜひ何度も観て映像のパズルに挑戦してみてください!
参考記事:”原爆の父”『オッペンハイマー』、C・ノーラン監督がピューリッツァー賞原作を圧巻の映画化!
■クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)監督をもっと知りたい!【管理人・選】
誕生日:1970年7月30日生まれ
星座:しし座
出身:イギリス・ロンドン
※(新刊本・2023/7/20)フィルム・ノワールの時間を切り刻み、スーパーヒーロー映画にリアリズムをもち込み、スパイ・アクションとSFを融合させる……長編デビュー作『フォロウィング』から最新作『Oppenheimer』まで、芸術性と商業性を兼ね揃えた特異点クリストファー・ノーランの歩み。【引用:Amazon】
ノーラン・ヴァリエーションズ「クリストファー・ノーランの映画術」
※デビュー作『フォロウィング』から最新作『TENET テネット』までを作品ごとにとりあげ、脚本ができるまで、撮影方法、ビジュアルイメージづくり、演出論、音へのこだわりなど「ノーラン独自の映画術」を、未公開写真、絵コンテ、シーンスケッチをもとに詳細に紐解く。さらに『ダークナイト トリロジー』、『インセプション』、『ダンケルク』など大ヒット作に投影されたノーラン自身の経験、インスピレーション、これまで詳しく語られなかった生い立ち(「故郷という概念が人とは少し違っていると思う」)もすべて明かされる。【引用:Amazon】
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高校2年生で『アベンジャーズ』を観て以来の映画ファン。大学と大学院では映画研究にどっぷり浸かっていました。
アナログでファンアートを描いてはインスタグラムに載せています。楽し〜!
話題の作品や、そこにつながる過去の名作、注目のキャストなどをわかりやすく楽しく紹介していきたいです!
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